【令和6年度版】中小企業診断士とは?試験日程や内容難易度について解説
経営のコンサルタントとして注目度の高い、中小企業診断士。国家資格であり難易度も高い資格ですが、会社員が自己啓発やスキルアップのために資格取得を目指すケースも増えています。中小企業診断士とはどのような資格なのか、また取得のための試験日程や難易度について解説をします。
中小企業診断士ってどんな資格?
中小企業診断士は、日本における唯一の国家資格の経営コンサルタント資格で、中小企業の経営に対して診断・助言を行う専門家です。資格名に「中小企業」とありますが、経営全般に関する知識と能力を備えており、大企業やベンチャー企業に対しても幅広く対応できる資格です。中小企業診断士の資格を取得することで、経営コンサルタントとして独立したり、企業内で経営や専門部門の仕事をするなど、さまざまな活躍の場が広がります。また、中小企業診断士の試験範囲は、経営・マーケティング全般となっているため、自己啓発やマネジメントスキルを身に着けてキャリアアップしたい人にも人気の資格です。
中小企業診断士の資格取得メリット
中小企業診断士になるには、会計、経営、生産管理、店舗運営、IT、中小企業政策など幅広い知識が求められます。資格取得のための学習を通じて、経営全体を幅広く診断し、解決策を立案する能力が身につきます。
資格取得の難易度が高いため、保有していることは幅広い専門知識を持つ証明となります。中小企業診断士は唯一の経営コンサルタントの国家資格であるため、独立する際の信頼性も高めるためにも役立ちます。
企業内では経営や専門部門での役割を担ったり、知識を活かした業務を遂行することで、キャリアアップの幅が広がります。また、自己啓発やマネジメントスキルを向上させるために、資格取得を推奨する企業も増えています。
中小企業診断士の活躍シーンは?
中小企業診断士はさまざまな場面で活躍します。
独立して経営コンサルタントとして活躍する
中小企業診断士が独立して経営コンサルタントとして企業の成長と発展をサポートすることができます。具体的な業務としては、まず、企業の経営診断を行い、現状の課題を分析します。
その後、経営戦略の立案、財務分析、マーケティング戦略の策定、人材育成、組織改革など、具体的な改善提案を行います。
また、事業計画の作成や実行支援、資金調達のアドバイス、新規事業の立ち上げ支援なども担当します。
金融機関で活躍する
中小企業診断士が金融機関の業務でも中小企業診断士の資格が生かされます。
金融機関での業務では、企業の財務状況や経営状態を詳細に分析し、融資の可否を判断します。また、融資先企業に対して経営改善の提案や経営戦略のアドバイスを提供します。
さらに、事業計画の作成支援や資金繰りのアドバイスも行い、企業の成長を支援します。中小企業診断士としての業務を通じて、金融機関のリスク管理を強化し、企業との信頼関係を構築することができます。
中小企業診断士として登録するには?
「中小企業診断士」として登録するには、国家資格である中小企業診断士試験(1次試験・2次試験)に合格し、実務補習もしくは実務従事を15日以上受ける必要があります。
1次試験の合格後に「養成課程または登録養成課程」に進むことで2次試験や実務補習・実務従事が免除になるという方法もあります。
試験制度について
中小企業診断士は1次試験、2次試験を経て、診断士登録のための実務補習が受けられます。
1次試験はマークシート方式で7科目が2日間に分けて行われます。1次試験に合格した人のみが2次試験へと進むことができ、同時に翌年の2次試験受験資格も与えられます。2次試験は4科目の筆記試験と面談方式の口述試験があります。
1次・2次試験ともに、全科目の平均が60点以上であって、かつ40点未満の科目が無いことが基準です。
<第1次試験から実習までの流れが確認できる図を作成>
難易度・合格率は?
ここ10年の中小企業診断士の合格率は下記の通りです。
|
1次試験合格率 |
2次試験合格率 |
試験合格率 |
---|---|---|---|
平成26年 |
23.2% |
24.3% |
5.6% |
平成27年 |
26.0% |
19.1% |
4.9% |
平成28年 |
17.7% |
19.2% |
3.3% |
平成29年 |
21.7% |
19.4% |
4.2% |
平成30年 |
23.5% |
18.8% |
4.4% |
令和元年 |
30.2% |
18.3% |
5.5% |
令和2年 |
42.5% |
18.4% |
7.8% |
令和3年 |
36.4% |
18.3% |
6.7% |
令和4年 |
28.9% |
18.7% |
5.4% |
令和5年 |
29.6% |
18.9% |
5.5% |
平均 |
27.9% |
19.3% |
5.3% |
※中小企業診断HP「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」より抜粋
ここ10年の1次試験の平均合格率は27%、2次試験の平均合格率は19%、2つの試験を合わせた平均合格率は5%と、かなり難易度の高い試験といえます。
中小企業診断士取得までの勉強時間は1,000時間といわれており、科目も多いため、独学では難しい試験です。
試験日程【令和6年度版】
令和6年度の試験日程は次の通りです。
<外部リンク>「中小企業診断士試験日程」
1次試験
申込受付期間・試験日・合格発表
試験案内配布・申込受付期間 | 令和6年4月25日(木)~5月29日(水) |
---|---|
試験日 |
令和6年8月3日(土)・4日(日) |
合格発表 |
令和6年9月3日(火) |
2次試験
申込受付期間・試験日・合格発表
試験案内配布・申込受付期間 | 令和6年8月23日(金)~9月17日(火) |
---|---|
筆記試験日 |
令和6年10月27日(日) |
筆記試験合格発表 |
令和7年1月15日(水) |
口述試験日 |
令和7年1月26日(日) |
合格発表 |
令和7年2月5日 (水) |
試験科目は何がある?
中小企業診断士の試験科目は次の通りです。
現在2次試験の概要は中小企業診断協会HPにて8月発表予定になっています。
1次試験
1次試験は2日間の日程で行われます。
日程 |
|
実施時間 |
時間 |
試験科目(1科目100点) |
---|---|---|---|---|
1日目 |
午前 |
9:50~10:50 |
60分 |
A:経済学・経済政策 |
11:30~12:30 |
60分 |
B:財務・会計 |
||
午後 |
13:30~15:00 |
90分 |
C:企業経営理論 |
|
15:40~17:10 |
90分 |
D:運営管理 |
||
2日目 |
午前 |
9:50~10:50 |
60分 |
E:経営法務 |
11:30~12:30 |
60分 |
F:経営情報システム |
||
午後 |
13:30~15:00 |
90分 |
G:中小企業経営・中小企業政策 |
2次試験
2次試験の受験資格は1次試験合格者(全科目)です。
受験資格は1次試験合格年度とその翌年度に限り有効です。
|
時間 |
試験科目(1科目100点) |
---|---|---|
午前 |
80分 |
【事例Ⅰ】組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略および管理に関する事例 |
80分 |
【事例Ⅱ】マーケティング・流通を中心とした経営の戦略および管理に関する事例 |
|
午後 |
80分 |
【事例Ⅲ】生産・技術を中心とした経営の戦略および管理に関する事例 |
80分 |
【事例Ⅳ】財務・会計を中心とした経営の戦略および管理に関する事例 |
※第2次試験案内の概要については、8月23日(金)に中小企業診断協会HPに掲載予定です。
2次の筆記試験に合格すると口述試験(面接)があります。
実務補修(実習)
2次試験合格者は合格後3年以内に登録実務補習機関による実務補習を行うか、実務に15日以上従事することにより、中小企業診断士としての登録の申請を行うことができます。
登録実務補習機関による実務補習は、1コース5日間もしくは15日間で設定されています。受講者6名以内でグループを編成し、指導員の指導のもと、実際に企業等に対する経営診断・助言を行います。
日程 |
主な内容 |
---|---|
実施の約1週間前 |
指導員からメールで連絡 |
1日目 |
グループ別打合せ |
2日目 |
企業等の訪問・調査、資料分析など |
自主学習 |
受講者・指導員間でメールにて打ち合わせ |
3・4日目 |
全体調整、診断報告書の作成 |
5日目 |
企業等への報告会など |
実務補習を修了して初めて中小企業診断士として正式に登録できます。
各試験の合格発表日と受験料
各試験の合格発表日と受験料は次の通りです。
※詳細は中小企業診断協会をご確認ください。
<外部リンク>中小企業診断協会HP
1次試験
受験手数料…14,500円(税込)
合格発表…令和6年9月3日(火)
試験の申込は郵送または全国で8地区の配布場所と中小企業診断協会協会にて試験案内(申込書)を配布しています。
合格発表は協会のWebサイトで行われます。※掲示による発表は行われません
2次試験
受験手数料…17,800円(税込)
筆記試験合格発表…令和7年1月15日(水)
口述試験日…令和7年1月26日(日)
合格発表…令和7年2月5日 (水)
試験の結果発表について
2次試験の結果は、合格者にのみ口述試験の案内が届きます。一方、不合格者には、各自の総得点と科目別得点を数段階に区分した結果が通知されます。
実習
・15 日間コース…210,000 円(税込)
・8日間コース…105,000 円(税込)
・5日間コース…70,000 円(税込)
※令和6年7月・8月・9月実施分より実務補習の受講料が改訂されています。
中小企業診断協会HPより申込可能です。
合格基準を知っておこう
1次試験の合格基準
① 総点数の60%以上
② 1科目でも満点の40%未満のないこと
2次試験(筆記試験)の合格基準
① 総点数の60%以上
② 1科目でも満点の40%未満のないこと
1科目100点のため1次試験では420点、2次試験では240点以上が必要です。すべての科目が60%以上でなくても良いため、低い科目の点数を他の科目の点数で埋めることができます。ただし、1科目でも40%未満(40点未満)の点数であると不合格になるので注意しなければなりません。
2次試験の口述試験の合格基準
受験者のほとんどが合格をしますが、学んだことを口頭で説明できるように準備をしておきましょう。
1次試験の科目合格制度について
中小企業診断士試験の1次試験には科目合格の制度があります。科目合格を活用することにより、数年かけて資格取得を目指すことが可能になります。
科目合格によって免除効果がある
科目合格の場合、申請をすることにより該当科目が「翌年度と翌々年度」の1次試験の受験の際に免除されます。ただし、免除を受ける際には申請が必要になるため、注意が必要です。
科目合格による免除の合格基準は?
1次試験合格の基準「総点数の60%以上、かつ満点の40%未満の科目がない」という条件をクリアできなかった場合でも、1次試験7科目のうち1科目でも点数が満点の60%以上(60点以上)とれていればその科目は科目合格となります。
対策・合格のポイント
中小企業診断士は出題範囲も広く、学習が多岐にわたるため、バランスよく科目ごとに勉強時間とスケジュールを立てることが重要です。試験合格への対策と、合格のポイントについて解説します。
短期間で合格するためのポイント
中小企業診断士合格のために必要な勉強時間の目安は1,000時間といわれています。資格試験の勉強方法としては、独学、通信教育、資格スクールという主に3つの方法がありますが、中小企業診断士は科目が多く出題範囲も広いため独学より、通信教育や資格スクールを利用して効率よく学ぶことがおすすめです。
中小企業診断士の試験は100点を狙う必要はなく、総点数60%以上をとることが目標です。特定の科目を深堀し過ぎず、過去問などを参考に出題傾向を明確にして学習することがポイントになります。
仕事をしながら資格取得を目指す場合は、通勤時間などの隙間時間を利用しながら、学習を進めていきましょう。
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まとめ
中小企業診断士は難易度の高い資格ですが、効率よく勉強を進めていくことで、社会人であっても資格取得を目指せる資格です。科目が多く、学習範囲も広いため、一つの科目に集中せず、出題傾向をつかみながら合格点を目指して学習をしていくことが重要です。中小企業診断士の資格取得のための学習は幅広い知識を得ることとなり、スキルアップにつながります。