G検定とは?難易度や勉強方法、E検定との違いを比較して紹介
G検定とは、AIやディープラーニングの基礎知識と事業活用能力を評価する民間資格試験です。技術的な知識だけでなく、ビジネスへの応用力や倫理的側面を含む幅広い知識を持つ「ジェネラリスト」の育成を目的としています。AI時代のビジネスパーソンにとって、キャリアアップが期待できる有用な資格と言えるでしょう。
この記事では、G検定とE検定の違いや、G検定の試験概要、出題範囲を詳しく解説します。さらに、G検定を取得するメリットや活用できる職種についても触れ、合格するための勉強方法や必要な勉強時間についても紹介します。G検定取得を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

G検定とはどのような資格?

G検定とは、正式名称をジェネラリスト検定といい、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している民間資格試験の一つです。この試験は、AIやディープラーニングの活用に関する知識やビジネス応用のための基礎知識を検定し、合格すればICT(情報通信技術)人材としてのキャリアアップが期待できるほか、AI関連企業への就職や転職にも役立つでしょう。
G検定は特定の業界や職種に限定されるものではありません。どの業界でも課題となる業務効率化やAI活用、デジタル施策の推進に自信を持って臨めるようになるため、デジタル時代のビジネスに関わる全ての人におすすめできる資格です。
G検定の主催団体
G検定を主催しているのは、日本ディープラーニング協会(通称JDLA)です。2017年に設立されたJDLAは、ディープラーニングを事業の核とする企業や有識者が中心となり、ディープラーニング技術を日本の産業競争力の向上に活かすために必要な活動を行っている団体です。
JDLAは、AIやディープラーニング活用人材の育成に向けて、G検定のほか、E資格など4つの講座・検定・資格を提供しています。
G検定とE資格の違い
JDLAが実施している類似の資格であるE資格は、G検定と同様にディープラーニング活用のリテラシーを認定する資格ですが、対象者が異なります。G検定はAIをビジネスに応用することを目的としており、主にビジネスパーソン向けです。
一方、E資格はAIエンジニアやディープラーニングプロジェクトの開発・推進に関わる人を対象にしています。アルゴリズムの構築や実装に必要な知識とスキルを習得する資格なので、G検定に比べて難易度が高く、E資格の受験にはJDLA認定のプログラムを受講する必要があります。
G検定が注目されている背景

AIが日常生活に浸透し、ビジネスでもDX化が進む中、日本政府が「5年間で230万人のデジタル人材を育成する」という方針を打ち出したことも後押しして、AIやデータ活用の基礎知識の重要性が高まっています。こうした背景から、ビジネスパーソンがAIを理解し、活用するための基礎知識を提供するG検定が注目されています。
G検定はIT業界にとどまらず、製造や金融、不動産など、さまざまな業界から関心を集めており、製造、営業、企画、マーケティングなど、多様な職種の人々が受験しています。
G検定の概要
G検定の試験概要について、下記の表にまとめました。
試験日程 |
年6回開催(1月、3月、5月、7月、9月、11月) |
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試験費用 |
一般:13,200円(税込)学生:5,500円(税込) |
受験資格 |
制限なし |
受験会場 |
オンライン実施(自宅受験) |
なお、試験日程は以前は年3回の開催でしたが2024年度から年6回開催に変更になり、2025年度も年6回開催の予定です。
参照:G検定の試験日程
G検定の出題範囲
人工知能とは・人工知能をめぐる動向
人工知能の定義や成り立ち、歴史が問われます。AIが社会へ与える影響を考えるときに重要な概念であるチューリングテストやシンギュラリティなどの問題も取り上げられます。
機械学習の概要
機械学習の基本的な概念から応用事例、教師あり学習・教師なし学習・強化学習の違い、代表的なアルゴリズム(回帰分析、分類、クラスタリングなど)の特徴や適用例が問われます。
ディープラーニングの概要・要素・応用例
ディープラーニングの概要や学習アルゴリズム、CNNなどの代表的な基本モデルを扱います。AIプロジェクトの計画、データ収集、ビジネス活用、法・倫理など幅広い知識から実践的な活用方法も問われます。
AIの社会実装に向けて
データの収集・加工・分析・学習のプロセスから、AIプロジェクトの計画と実装の基本的な流れが問われます。
AIに必要な数理・統計知識
適切なモデル選択や最適化を行うために必要な基礎知識、データの前処理や結果の解釈のために必要な数理・統計的な基礎知識が問われます。
AIに関する法律と契約・AI倫理・AIガバナンス
個人情報保護法、著作権法、不正競争防止法、AI開発委託契約など、AIに関連する法律や契約が問われます。また、国内外のガイドライン、プライバシー、公平性、安全性の問題から倫理的課題への対応も問われます。
G検定の難しいポイント
前提知識を持っていた方が有利
G検定の合格率は65〜70%程度なので、数字だけ見ると比較的合格しやすい検定と言えるかもしれません。
受験者の属性を見ると、業種別では「製造業」21.2%、「情報処理・提供サービス業」17.8%、「ソフトウェア業」15.3%となっており、大学生の受験者も9.3%いることから、仕事でAIに関わる人や専門的に学んでいる人が多く受験していることが分かります。そのため、実務経験や専門知識がない初心者が一から合格を目指す場合は、十分な勉強時間を確保し、しっかりと対策することが必要です。
参照:一般社団法人日本ディープラーニング協会(2024年第2回のG検定合格者に聞いたアンケート結果)
出題範囲が幅広い
G検定の難しさは、その広範囲にわたる出題内容にあります。人工知能の基礎から最新のディープラーニング、AIの社会実装や倫理的課題まで、出題範囲は非常に幅広いです。技術面だけでなく、ビジネスへの応用、法律、倫理など、さまざまな分野の知識を幅広く理解することが求められます。合格ラインに到達するためには、特定の分野に詳しくても他の分野もカバーする必要があります。また、AIの急速な進化に伴い、最新の動向を把握しておくことも重要な課題です。
なお、2024年第6回からは出題数が200問程度から160問程度に変更されました。試験時間は120分のままなので、1問あたりの解答時間が増えたことは受験者にとって朗報です。
G検定取得の3つのメリット
AIやディープラーニングを体系的に学べる
G検定は、AIやディープラーニングに関する基礎知識と事業への活用能力を評価する試験です。幅広い知識が問われるため、学習を通じてディープラーニングを網羅的に学べることは大きなメリットです。仕事でディープラーニングが必要な場合、理解が不足していた部分を体系的に学び直すことで、実務に活かしやすくなります。
また、G検定合格者には合格証のほか名刺に掲載可能な合格者ロゴ、デジタル証明書(オープンバッジ)が提供されるため、これらの分野における体系的な知識を持っていることを証明できます。
キャリアアップや就職・転職に有利
2023年に生成AIの影響が企業に認識されたことで、AIスキルを持つ人材の需要は高まる一方です。G検定を取得すれば、AI導入やプロジェクトリーダーシップに役立つ知識が身につき、幅広い分野でのキャリアアップが期待できます。
また、AI関連企業やデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業への就職や転職でも有利に働きます。AI人材の不足が続く中、G検定取得者は特にAI関連職種で高い需要が見込まれます。
AIコミュニティ「CDLE」に参加できる
G検定の合格者は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催するコミュニティ「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」に参加できます。このコミュニティは合格者のみが参加でき、最新のAI動向に関する情報交換や交流が日常的に行われています。さらに、イベントや短期間でアイデアを形にする「ハッカソン」といった活動も行われ、専門的な「E資格」取得に向けた情報を得たり、ディープラーニングに詳しい人々とのネットワークを広げる機会も豊富です。
G検定取得後に活用できる職種
G検定で得た知識を活かせる職種は多岐にわたりますが、特にデータサイエンティストやAI関連エンジニアが代表的です。データサイエンティストは、データの収集・前処理や分析を行う統計解析の専門家であり、G検定で学んだAIやディープラーニング、統計学の知識が役立ちます。また、AI関連エンジニアはAI技術を使ったシステムの設計、開発、運用を担当するため、G検定の知識はキャリアの基盤となります。さらに、AI導入を支援するAIコンサルタントや、AIツールを活用してデータ分析を行うマーケターやビジネスアナリストにも、この知識は大いに役立つでしょう。
G検定取得に向けた勉強方法

公式テキスト
合格者の多くはJDLAが監修したG検定公式テキストを使って勉強しています。新シラバスに完全準拠しており、G検定の試験内容を正確に理解するために最適です。試験対策だけでなく、ディープラーニングの入門書としても優れており、事業活用できるジェネラリストに必要な知識を幅広くカバーしています。
問題集
効率的に知識を習得する方法として、問題を解きながら傾向や内容を学ぶことが効果的です。G検定には過去問題集はありませんが、公式サイトには例題が掲載されています。また、公式サイトでは、G検定の学習に役立つ書籍や、合格者が実際に使用した参考書や勉強法も紹介されており、これらを活用して学習を進めることができます。
G検定対策アプリ
スマートフォンやタブレットで手軽に学習できるG検定対策アプリを活用するのも効果的です。アプリなら隙間時間を使って効率よく学習を進められ、学習進捗の可視化や得意・苦手分野の把握など、サポート機能も充実しています。通勤時間や待ち時間を有効に活用できるため、忙しい人にもおすすめの勉強法です。
G検定対策講座の受講
JDLA認定の講座や民間企業が提供する対策講座を受講する方法もあります。オンラインや対面など、様々な形式があり、自分のペースで学習が可能です。プロによる講義を通じて体系的に学べるので、全体像を把握しやすくなり、理解も深まります。AIやディープラーニングに初めて触れる方には特におすすめの学習方法です。
G検定取得に必要な勉強期間
合格者アンケートによると、G検定合格に必要な勉強時間の目安は30〜50時間程度です。1日1時間ずつ勉強を続ければ、約1か月で合格を目指せる知識が身に付きます。ただし、AIやディープラーニングに初めて触れる方は、さらに多くの学習時間が必要でしょう。
ITの基礎知識を証明する国家資格「ITパスポート」は、合計100〜200時間の学習時間が目安とされています。ITパスポートはIT全般の基礎知識を幅広くカバーしているのに対し、G検定はAIやディープラーニングに特化している点が異なります。
まとめ
2024年のノーベル物理学賞に「機械学習」の基礎研究に関わった教授が選ばれ、AIやディープラーニングの重要性がさらに広く認識されました。今後、この技術を正しく理解し、活用できる人材の需要がますます高まるでしょう。
AIに関する知識がなくても、1〜2ヶ月の学習でG検定に合格するレベルに達することは可能です。公式テキストや参考書を活用し、特に講座の受講は、体系的に学べる上に専門家からのサポートも得られるため、合格への近道となります。