ITパスポートとは?難易度や合格率、勉強方法を解説! | TECHのススメ
ITパスポートはITに関する基礎的知識を証明する国家資格で、転職や就職に役立つことから毎年多くの人が受験しています。この記事では、ITパスポートとはどんな資格なのか、取得のメリット、難易度などを解説します。試験の概要や出題範囲、受かるために必要な勉強時間や効率的な勉強方法も紹介しますので、受験しようと考えている方はぜひご覧ください。
ITパスポートとは
ITパスポートとは、情報技術の基礎知識を問う国家試験です。試験範囲はITの基本、経営戦略、マネジメント、セキュリティなど幅広く、合格するとITに関する基礎知識があることを証明できます。
ITパスポートは入門的な資格として位置付けられているため、IT関連の仕事をしている人だけでなく、事務職や営業職などの方や学生も多く受験しています。受験者は年々増えており、2023年度の年間応募者は297,864人と過去最多を記録しています。
ITパスポート試験は経済産業省のIT政策実施機関「独立行政法人情報処理推進機構(IPA)」が実施する「情報処理技術者試験」の1つで、情報処理技術者試験には難易度の異なる12の区分があります。ITパスポート合格後は「情報セキュリティマネジメント試験」や「基本情報技術者試験」などを受けることで、さらなるステップアップが目指せます。
現在では幅広い業界でIT化が進み、仕事でパソコンを使う機会が増えています。ITパスポート試験ではビジネスに関係した問題も出題されることから、業務に必要なIT知識を証明でき、就職や転職に役立ちます。ITパスポートは、IT化が進む社会において必須の資格になるといえるでしょう。
初級システムアドミニストレータって?
初級システムアドミニストレータ(初級シスアド)は2009年の試験を最後に終了した資格で、ITパスポートが実施されるまでは情報処理の入門資格とされていました。ITパスポートは事実上の後継といわれていますが、初級シスアドの方が専門性や難易度は高めでした。
MOSって?
MOSとはマイクロソフト社が認定する民間資格で、正式名称はマイクロソフトオフィススペシャリストです。WordやExcelなどを使いこなすスキルを証明する資格で、試験はパソコンを使った実技試験のみです。
ITパスポートはITに関する知識が問われるのに対しMOSはビジネスに使える実践的な知識やスキルが問われるため、実務能力を求める求人などではMOSの方が重視されることが多いです。
ITパスポートを取得するメリット4選
ITパスポートはITに関する基礎知識があることを証明する資格で、業種や職種を問わず幅広い分野で役立ちます。取得するメリットは、大きく分けて次の4つです。
- ITの基礎知識が身につく
- 経営や法務の基本も学べる
- 就職や転職でアピールポイントになる
- IT系上位資格の試験対策になる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. ITの基礎知識が身につく
近年は業界や業種を問わずIT化が進んでいるため、ITを活用できるかはどのような仕事でも重視されます。ITパスポート試験に合格できるレベルまで勉強すると、IT分野の基礎知識が身につくので、就職希望の業界を絞り込めていない学生にもおすすめです。
2. 経営や法務の基本も学べる
ITパスポートの試験問題は幅広い分野から出題されるため、経営の基本や戦略、法務、財務、マーケティングなどについても学ぶ必要があります。これにより、ITパスポートの取得はビジネスに必要なIT以外の知識習得にも役立ちます。
3. 就職や転職でアピールポイントになる
現代社会でITの活用は欠かせないため、企業ではIT知識を持った人材を求めています。ITパスポートはITの基礎知識を持っている証明になるため、就職や転職の際のアピールポイントとして役立ちます。
特に事務系の職種では、パソコンスキルの証明として重視されることがあります。また、取得すると資格手当が出る企業も場合もあります。ただし、証明できるのは基礎知識のため、ITエンジニアなど専門的な職種の場合はさらに上位資格の取得がおすすめです。
4. IT系上位資格の試験対策になる
IT系の上位資格を取得するには、まずは専門的な内容を理解するための基礎知識から習得する必要があります。ITパスポート試験では幅広いIT分野の基礎知識が問われるため、試験対策で学んだ内容は上位資格を取得を目指す際の土台として役立ちます。
また、IT系上位資格の試験の構成はITパスポートと近いため、ITパスポート試験を受けた経験は上位資格の試験対策としても有効です。
ITパスポートの難易度
ITパスポートはIT系国家資格のなかでも入門レベルで、難易度は決して高くはありません。近年の合格率は50%前後で、受験者の2人に1人は合格していることになります。年齢・性別・学歴などの制限はなく誰でも受けられるため、2022年には7歳の小学1年生が合格者の最年少記録を更新しています。
年度 |
受験者数(人) |
合格者数(人) |
合格率(%) |
---|---|---|---|
2023 |
265,040 |
133,292 |
50.3 |
2022 |
231,526 |
119,495 |
50.6 |
2021 |
211,145 |
111,241 |
52.7 |
2020 |
131,788 |
77,512 |
58.8 |
2019 |
103,812 |
56,323 |
54.3 |
2018 |
95,187 |
49,221 |
51.7 |
2017 |
84,235 |
42,432 |
50.4 |
2016 |
77,765 |
37,570 |
48.3 |
2015 |
73,185 |
34,696 |
47.4 |
2014 |
71,464 |
34,215 |
47.9 |
データ出典:ITパスポート試験統計情報|独立行政法人情報処理推進機構
過去10年のITパスポート試験の合格率は上の表の通りで、おおむね50%前後で推移しています。ほかの国家試験と比べると難易度は低めですが、誰でも簡単に合格できるというわけではありません。
入門編だからと甘く見ず、しっかり基礎知識を身につけたうえで試験に臨むことが大切です。
社会人の合格率は?
2024年4月・5月に実施されたITパスポート試験の合格率は、社会人が54.2%なのに対し学生は41.1%でした。学生に比べて社会人の合格率が高いのは、IT知識だけでなく経営やマーケティングなどの知識も問われるため、実務経験のある社会人の方が有利だからと思われます。
社会人 |
受験者数(人) |
合格者数(人) |
合格率(%) |
---|---|---|---|
IT業務※ |
4,019 |
2,331 |
58.0 |
非IT業務 |
21,893 |
11,715 |
53.5 |
データ出典:ITパスポート試験統計情報|独立行政法人情報処理推進機構
※システム化戦略・企画・計画、プロジェクト管理、システム設計、プログラム開発、ネットワーク技術支援、データベース技術支援、エンベデッドシステム開発、情報セキュリティ技術支援・管理・運用、ITサービスマネジメント(システム管理・運用)、システム監査
社会人のうちIT業務に就いている人とIT以外の業務に就いている人の合格率は、IT業務に就いている人の方がやや高いものの、大きな差はありません。また、社会人受験者のうち非IT業務の方が8割以上を占めることから、業務内容にかかわらず幅広い職種の方が受験していることがわかります。
学生の合格率は?
学生 |
受験者数(人) |
合格者数(人) |
合格率(%) |
---|---|---|---|
大学院 |
271 |
175 |
64.6 |
大学 |
3,441 |
1,693 |
49.2 |
短大 |
40 |
7 |
17.5 |
高専 |
132 |
47 |
35.6 |
専門学校 |
599 |
132 |
22.0 |
高校 |
1,512 |
427 |
28.2 |
小・中学校 |
63 |
14 |
22.2 |
その他 |
98 |
36 |
36.7 |
データ出典:ITパスポート試験統計情報|独立行政法人情報処理推進機構
学生の受験者は大学生が中心で、「就職活動にITパスポートを生かしたい」と考える方が多いからと推測されます。また、ITパスポートで入試優遇が受けられる大学もあり、高校生の受験も増えています。
合格率を見ていくと、大学院や大学は受験者全体の結果と近いのに対し、短大や専門学校、高校では30%以下と低い結果が出ています。これは年齢や経験の差もありますが、「学校に言われてしかたなく」など、試験対策を十分におこなわずに受験している方がいるのも原因と思われます。
ITパスポートはIT以外の知識も問われるため、実務経験のある社会人の方が有利です。しかし、学生でもしっかり試験準備をおこなえば、難易度は決して高くないといえるでしょう。
ITパスポートの合格基準
ITパスポートは「IRT(Item Response Theory)方式」により合否判定をおこないます。IRTは日本語にすると「項目応答理論」で、正答率が高い問題は低配点、低い問題は高配点が振り分けられます。これにより、受験生は試験ごとの難易度に左右されることなく、公平な評価を受けられます。
問題は合計100問出題されますが、評価点は受験者の解答結果をもとに試験後に算出されるため、「1問あたり〇点」などの採点基準はありません。合格ラインは、総合評価点が1000点中600点以上で、3つの分野別評価点もそれぞれ1000点中300点以上の獲得が必要です。
ITパスポートの概要
試験実施日 |
月2回や毎週金・土・日など会場ごとに異なる |
---|---|
受験資格 |
年齢や国籍を問わず誰でも受験可能 |
試験時間 |
120分 |
試験会場 |
全国47都道府県 |
受験料 |
税込7,500円(2024年度試験) |
データ出典:【ITパスポート試験】受験要領
申込受付期間
試験の申し込みはITパスポート試験WEBサイトからおこないます。申込可能な試験日は、支払い方法及び受験申込時の時間により次の表のとおり異なります。
支払い方法 |
受験申込時の時間 |
申込可能な試験日 |
---|---|---|
クレジットカード、 |
00:00 ~ 11: 59 |
申込日の翌日 ~ 3ヵ月後まで |
12:00 ~ 23:59 |
申込日の翌々日 ~ 3ヵ月後まで |
|
コンビニ |
00:00 ~ 23:59 |
申込日の5日後 ~ 3ヵ月後まで |
データ出典:【ITパスポート試験】受験申込手順
試験方法
ITパスポート試験はCBT(Computer Based Testing)方式で実施されます。CBT方式はコンピューターを使って実施する試験方式で、受験者はモニターに表示された試験問題にキーボードやマウスを使って解答します。出題形式は4肢択一で、記述式の問題はありません。
出題分野
試験問題は「ストラテジ系(経営全般)」、「マネジメント系(IT管理)」、「テクノロジ系(IT技術)」の3分野から出題されます。それぞれの分野についてはあとから詳しく説明しますが、主な内容や出題数の目安は次の通りです。
出題分野 |
内容 |
出題数 |
---|---|---|
ストラテジ系 |
企業と法務、経営戦略、システム戦略 |
35問程度 |
マネジメント系 |
開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント |
20問程度 |
テクノロジ系 |
基礎理論、コンピュータシステム、技術要素 |
45問程度 |
試験レベル
ITパスポートの試験レベルは、情報処理技術者試験の試験区分の中では「レベル1」に相当します。これは、ITを利用・活用するすべての人を対象にした基礎的な内容で、難易度は決して高くありません。
ITパスポートの出題範囲
ITパスポートの試験問題は、次の3分野から出題されます。
- ストラテジ系(経営全般)
- マネジメント系(IT管理)
- テクノロジ系(IT技術)
それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
ストラテジ系(経営全般)
分野 |
大分類 |
中分類 |
---|---|---|
ストラテジ系 |
企業と法務 |
企業活動 |
法務 |
||
経営戦略 |
経営戦略マネジメント |
|
技術戦略マネジメント |
||
ビジネスインダストリ |
||
システム戦略 |
システム戦略 |
|
システム企画 |
ストラテジ系では企業経営全般についての知識が問われ、中でも経営戦略やシステム戦略、マーケティングについて多く出題される傾向にあります。また、著作権や個人情報保護といった法務関係の出題も多いため、関連用語は重点的に覚えておくと良いでしょう。
マネジメント系(IT管理)
分野 |
大分類 |
中分類 |
---|---|---|
マネジメント系 |
開発技術 |
システム開発技術 |
ソフトウェア開発管理技術 |
||
プロジェクトマネジメント |
プロジェクトマネジメント |
|
サービスマネジメント |
サービスマネジメント |
|
システム監査 |
マネジメント系では、システム開発やプロジェクト管理、サービス管理などについての問題が頻出されます。特に、システム開発の方式やプロジェクト管理・システム監査の流れについてはしっかり把握しておきましょう。
テクノロジ系(IT技術)
分野 |
大分類 |
中分類 |
---|---|---|
テクノロジ系 |
基礎理論 |
基礎理論 |
アルゴリズムとプログラミング |
||
コンピュータシステム |
コンピュータ構成要素 |
|
システム構成要素 |
||
ソフトウェア |
||
ハードウェア |
||
技術要素 |
情報デザイン |
|
情報メディア |
||
データベース |
||
ネットワーク |
||
セキュリティ |
最も出題数が多いのがテクノロジ系で、データベースやネットワーク、セキュリティーなどに関する知識が問われます。また、2進法から10進法への変換や稼働率の算出などの計算問題も出題されます。
ITパスポートに必要な勉強時間
ITパスポート試験の難易度は高くはないものの、合格するには一定程度の試験対策が欠かせません。試験に必要な勉強時間は平均150時間といわれていますが、ITに関して知識がある人とない人では差があります。それぞれどの程度の勉強時間が必要か見ていきましょう。
ITの事前知識がある場合
すでにIT系の仕事をしている社会人や情報系の学校に通う学生などが合格を目指すには、100時間程度の勉強が必要といわれています。1日2時間勉強すると、約1ヵ月半程度かかる計算です。
事前知識があるといっても、学校で学んだり業務で関わる内容はそれぞれ異なります。例えば学生はストラテジ系やマネジメント系、社会人はテクノロジ系など、自分にとってなじみの薄い分野を集中的に勉強することで、効率的に合格を目指せます。
ITの事前知識がない場合
ITの知識がない人が合格を目指すには、180時間程度の勉強時間が必要といわれています。これは、1日2時間の勉強で約3ヵ月かかる計算です。
IT知識がない場合、いきなりテキストを解こうとすると用語がわからず挫折することがあります。このため、まずはIT用語の意味を理解することからスタートし、余裕をもったスケジュールで合格を目指すことが大切です。
ITパスポートの効率的な勉強方法
ITパスポートの勉強方法には、おもに次の4種類があります。
- 参考書を利用する
- 過去問を繰り返し解く
- 無料学習サイトを使う
- 通信講座を受ける
それぞれの特徴を説明しますので、自分に合った方法を選んで効率的に合格を目指しましょう。
1. 参考書を利用する
独学でITパスポートを取得するのに欠かせないのが参考書です。数多く出版されているため、自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。
IT知識がない方は、わかりやすいイラスト解説や用語集がついた初心者向けの参考書がおすすめです。すでに知識がある方は、3分野のうち苦手な分野についての参考書を選ぶと効率的に学習できます。
なお、ITパスポート試験は技術動向や環境変化に合わせて随時シラバス(試験範囲を示した冊子)が改訂されます。最新のシラバスに対応した、できるだけ新しい出版年の参考書を選ぶことも大切です。
2. 過去問を繰り返し解く
参考書で一通り学んだら、過去問を解くことも大切です。間違えた問題は参考書を読み直し、正解できるまで解きなおすことで苦手な分野を克服できます。過去問はITパスポート試験のホームページで公開されており、無料でダウンロード可能です。
【ITパスポート試験】過去問題(問題冊子・解答例)
古い過去問は現在と試験範囲が異なる場合があるため、最新の予想問題集を利用するのもおすすめです。また、実際の試験と同じ120分間で時間を設定し、効率的な時間配分や問題の解き方も身につけておきましょう。
3. 無料学習サイトを使う
無料の学習サイトやアプリも数多くあり、上手に利用すれば費用をかけずに試験対策できます。動画による解説や一問一答問題集、辞書のように使える用語集など種類も豊富なので、用途に合わせて使い分けると良いでしょう。
苦手問題をまとめて復習できる機能や正解率を確認できる機能など、便利な機能が使えるアプリもあり、学習の効率化に役立ちます。また、通勤・通学中や休憩中などのすきま時間にも使いやすいので、まとまった勉強時間が取れない方にもおすすめです。
4. 通信講座を受ける
「独学だとモチベーションの維持が難しい」という方は、通信講座の受講を検討してはいかがでしょうか。理解しやすいカリキュラムや教材が準備されているため、ITの知識がない方でも無理なく学習を進められます。
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まとめ
ITパスポートはIT関連の基礎知識があることを証明する資格で、就職や転職の際のアピールポイントになります。試験勉強を通してITの基礎知識を身につけられるため、IT系の上位資格取得を目指す人にとっては、専門的な内容を理解する上での足がかりとなります。
IIT系国家試験の中では入門編のため、IT知識ゼロからでも合格を目指せます。合格率は50%程度で、合格に必要な勉強時間は平均150時間といわれています。参考書や学習サイト、通信講座を利用するなど自分に合った方法で試験対策し、合格を目指しましょう。