医療事務の資格は何がある?
選び方と試験の内容を紹介

医療事務の仕事は専門性の高い内容も多く、医療事務に関連した資格を取得することで、就職や転職の足がかりとなるかもしれません。 ただ、医療事務の資格はたくさん存在するため、どれを取得すればいいのか悩んでしまうはず。 資格を取得する際は、「どのような資格試験があるのか?」「医療事務の資格の難易度はどのくらいなのか?」など、様々な疑問を解消することが大切です。

そこで本記事では医療事務に関連する資格の種類をはじめ、それぞれの違いや選び方、難易度について解説します。

谷京香講師

この記事の監修者
谷 京香

たのまな医療事務通信講座の講師、講座監修/ ヒューマンアカデミー医療事務講座の講師、講座監修 / ヒューマンリソシア株式会社 メディカル部門 マスターズマネージャー

医療事務とは

医療事務は、一般的に病院や診療所など医療機関での事務作業を担うスタッフを「医療事務」と呼んでいます。 医療事務の仕事内容は、受付や患者の対応、医療費の計算や診療報酬請求(レセプト業務)、カルテの整理など様々です。 医療事務の代表的な業務である診療報酬明細書(レセプト)の作成は、患者さんが受けた診療行為を点数化し、 いくらが本人負担でいくらが公的医療保険からまかなわれるのか計算するという仕事です。 このように、医療事務の仕事は他の職業にはない専門的なスキルが求められることが多くなります。

医療事務に資格は必要?

医療事務に就くために必須の資格は特になく、数ある資格はどれも基本的に医療事務における知識と技術の証明をするためのものです。 そのため、医師や看護師、薬剤師など他の医療関係の資格に比べれば、医療事務資格は簡単に取得できる資格が多くなります。

資格は必須ではないとはいえ、他の職業にはない専門的なスキルが求められることから、医療事務の資格取得にはきちんとした意味があり、 専用の勉強が必要であると言えるでしょう。

未経験の方におすすめ!医療事務の主要な4つの資格

数多くある資格試験の中でも幅広い知識やスキルが身につく主要な資格試験を紹介します。
医療事務のお仕事が未経験の方や、クリニックなど小規模な医療機関に務める予定の方におすすめの資格試験です。

1.医療事務認定実務者®試験

2021年度の受験者数は1万6千人以上となり、医療事務の資格試験の中でも認知のある資格試験となります。

試験の内容は、接遇マナーや医療事務の基礎知識とレセプト(診療報酬明細書)の作成スキルが主となっており、医療事務の業務に必要な全般的な知識・スキルを身につけることができます。

難易度は比較的低めで、初心者向けの医療事務資格試験となっています。

受験資格 特になし
試験日程 毎月1回(年12回)
試験方法 会場または在宅
試験時間 90分
試験形式 (学科、実技とも)マークシート
合格基準 【学科】
  • 60%以上
【実技】
  • 60%以上
合格率 60~80%程度
運営主体 全国医療福祉教育協会

参考:全国医療福祉教育協会 医療事務認定実務者®試験

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2.医療事務技能審査試験

医療事務技能審査試験は、メディカルクラークとも呼ばれています。

医療事務認定実務者®同様、「受付事務」「診察報酬に関する事務」「現場でのコミュニケーション能力」を問う資格試験となっています。

受験資格 特になし
試験日程 毎月1回(年12回)
試験方法 在宅
試験形式 マークシート、記述
合格基準 【学科】
  • 70%以上
【実技I】
  • 70%以上
【実技II】
  • 70%以上
合格率 60%程度
運営主体 一般財団法人日本医療教育財団

参考:日本医療教育財団 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)

3.医科2級医療事務実務能力認定試験

診療報酬明細書作成を含む診療報酬に関する知識、医療関連法規に関する知識を身につけることができます。

受験資格 特になし
試験日程 年3回
試験方法 在宅
試験形式 マークシート、記述
合格基準 60%以上
合格率 60~80%程度
運営主体 全国医療福祉教育協会

参考:全国医療福祉教育協会 医療事務認定実務者®試験

4.医療事務管理士®技能認定試験

学科試験の出題範囲は、「法規」「保険請求事務」「医学一般」の3分野と、さらに、レセプト作成に関する実技試験もあります。出題範囲が広い上に、試験回数が一般的な試験と比較すると少ないため、他の資格試験と比較して難易度はやや高くなります。

受験資格 特になし
試験日程 2ヵ月に1回(年6回)
試験方法 会場または在宅
試験形式 マークシート、記述
合格基準 【学科】
  • 在宅試験:80点以上
  • インターネット試験:70%以上
【実技】
  • 在宅試験:各問題で60%以上かつ、合計で80%以上
  • インターネット試験:70%以上
合格率 50~70%程度
運営主体

技能認定振興協会(JSMA)

参考:技能認定振興協会 医科医療事務管理士技能認定試験

こちらもおすすめ!他と差をつける資格

診療報酬請求事務能力認定試験

公益財団法人日本医療事務協会が主催している、厚生労働省の認定を唯一受けている検定で、難易度も高くなります。 他の試験と比較すると、診療報酬に関する知識や算定スキルに特化しているのが特徴です。

難易度は高いですが、資格を取得した際のメリットも大きくなります。この資格を所有している場合、資格給を出してくれる職場もあるため、初心者の方でも医療事務を目指すにあたって、持っていて損のない資格となります。

受験資格 特になし
試験日程 年に2回(7月、12月)
試験方法 会場
試験形式

マークシート、記述

合格基準 【学科】
  • 60%~75%
【実技】
  • 75%~85%
※試験によって合格基準は毎回異なります
合格率 医科:30~40%程度
歯科:30~50%程度
運営主体 公益財団法人日本医療保険事務協会

参考:日本医療保険事務協会 試験概要

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より専門的なことを学べる医療事務資格一覧

医療事務の仕事は多岐にわたります。一般的な医療事務の知識に加えて、さらに専門性を持ちたい方やよりスキルを高めたい方におすすめの資格を紹介します。

2級医療秘書実務能力認定試験

医療事務スタッフとしての医療事務実務能力だけではなく、患者接遇や院内コミュニケーション能力を含めた医療秘書実務能力を客観的に判断する資格試験です。

受験資格 特になし
試験日程 年3回
試験方法 在宅
試験形式

学科問題(マークシート)、実技問題(診療報酬明細書作成)

運営主体 全国医療福祉教育協会

参考:全国医療福祉教育協会

ホスピタルコンシェルジュ®検定試験

患者さんと接する際に求められるコミュニケーション能力と知識に特化した資格試験です。受付業務のスペシャリストを目指す方におすすめです。

受験資格 特になし
試験日程 3級:毎月、2級・1級:年2回
試験方法 在宅、会場
試験形式

3級:マークシート(択一式)、2級・1級:記述式(選択・記述)ロールプレイング

運営主体 技能認定振興協会

参考:技能認定振興協会

医師事務作業補助者実務能力認定試験

医師の事務作業に必要な能力と知識(診断書や紹介状の作成、電子カルテの代行入力など)について問う資格試験です。

受験資格 特になし
試験日程 年2回
試験方法 在宅
試験形式

学科問題(マークシート)、実技問題(各種書類作成)

運営主体 全国医療福祉教育協会

参考:全国医療福祉教育協会

DPC/PDPS初級検定試験

DPC請求事務は通常の請求事務とは異なる「包括払い」で算定するため特別な知識が必要です。 この試験は、DPC/PDPSの基礎的な知識と実務のスキルを計る検定試験です。

受験資格 特になし
試験日程 年2回
試験方法 在宅
試験形式

(1) 学科試験/選択問題、計算問題、記述問題
(2) 実技試験/レセプトの作成・点検、出来高レセプトからDPC/PDPSへの書き換え等

運営主体 技能認定振興協会

参考:技能認定振興協会

在宅診療報酬事務管理士®技能認定試験

在宅医療における医療保険や介護保険に関する知識を問う資格試験です。

受験資格 特になし
試験日程 年2回
試験方法 在宅
試験形式

学科試験、レセプト点検等(全て選択式)

運営主体 技能認定振興協会

参考:技能認定振興協会

電子カルテ実技検定試験

医療現場のIT化に伴い、医療コンピューター系のスキルに加え、電子カルテを扱うためのスキルも身につけていくことが大切。この試験は、電子カルテシステムを操作し、電子カルテを作成する能力を評価する資格試験です。

受験資格 特になし
試験日程 年3回
試験方法 会場
試験形式

学科問題(マークシート)、実技問題(ソフトによる診療録作成・出力)

運営主体 全国医療福祉教育協会

参考:全国医療福祉教育協会

医療事務OA実務能力認定試験

コンピュータによるレセプト作成能力や医療事務、コンピュータの知識を評価する資格試験です。

受験資格 特になし
試験日程 年3回
試験方法 在宅
試験形式

学科問題(マークシート)、実技問題(ソフトによる診療報酬明細書作成・出力)

運営主体 全国医療福祉教育協会

参考:全国医療福祉教育協会

どの資格を取ればいい?選ぶときのポイント!

たくさん存在する資格試験の中からいったいどの資格を取得したほうがいいのでしょうか?自分にあった資格をとるためのポイントを紹介します。

やりたい業務に必要な資格を取る

医療事務と一言でいっても業務内容は様々。入院施設があるような大きな病院の場合は科が多く、仕事が細分化されているケースが多いです。そのため、自分が興味がある、または応募しようと思っている業務の知識が身につく資格試験を受けるといいでしょう。

医療事務の主な業務内容
おすすめの資格試験業務内容
総合受付 医療事務認定実務者®試験、医療事務技能審査試験、医療事務管理士®技能認定試験など 保険証の受取、各診療科への案内を行います。受付は医療機関の印象を決める重要なポジションのため、患者さんに安心を与える接遇マナーが必要です。
診療科受付 医療事務認定実務者®試験、医療事務技能審査試験、医療事務管理士®技能認定試験など 各診療科の窓口で、総合案内から届くカルテの受け取り、診療後の検査の準備、処置伝票の作成や発行をします。
会計窓口 医療事務認定実務者®試験、医療事務技能審査試験、医療事務管理士®技能認定試験など 診察や治療を終えた患者さんの診療費を清算します。会計事務能力だけでなく、病院会計知識、医療保険制度、診療報酬制度などの知識も必要です。
医事課 診療報酬請求事務能力認定試験など 患者さんに行われた診療、投薬、処置などを漏れのない保険請求ができるように、レセプト(診療報酬明細書)を作成・発行します。
医局 2級医療秘書実務能力認定試験など 医療秘書は、秘書業務+医療事務を行います。資料や書類の作成・整理、電話応対、看護師や他の医師との連絡係など多様な秘書業務をこなします。

認知度のある資格試験を選ぶ

医療事務は民間資格のため、様々な団体や法人、協会などが主催しており、その団体によって合格率も異なってきますが、基本的には各資格試験は学科と実技によって構成されており、同じような出題傾向があるといえます。 ただし、受験者数が多い、認知度のある資格のほうが就転職のときに説明がしやすいでしょう。

医療事務の資格を取るための勉強方法とは?

医療事務の資格を取るためには、どのように勉強を進めるべきなのでしょうか。資格試験に向けた勉強方法は、大きく分けて3つあります。試験の勉強方法について確認し、自身に合った方法を見つけましょう。

大学・専門学校

まず、福祉系の大学や専門学校に通って勉強する方法があります。この方法は、学費がかかり、さらに卒業まで時間が必要になりますが、 就職までのバックアップサポートや面接対策といったサービスが付帯されることも多くなっています。しっかりと勉強して、試験の合格だけでなく就職まで目指す人にはこの方法が最適でしょう。

大学・専門学校への通学がおすすめの人

  • ☑就職に向けたサポートを必要とする人
  • ☑一緒に仲間がいることでモチベーションが上がる人
  • ☑勉強のコツや試験のポイントを直接教えてほしい人
  • ☑できるだけのことを実践し、合格する可能性を上げたい人
  • ☑時間や金銭的な余裕のある人

独学

独学は、市販のテキストやネット教材を使って、自分自身で勉強を進めます。 独学の場合、テキストさえ購入すればいつでもどこでも勉強ができ、さらに学費などもかかりません。 ただし、モチベーションの維持がしにくいというデメリットや、わからない箇所を誰かに質問することができず自分で解決する必要があるため時間がかかるでしょう。

独学がおすすめの人

  • ☑自分のペースで勉強を進めたい人
  • ☑仕事や家事が忙しく、空いた時間に勉強したい人
  • ☑スケール管理が得意な人
  • ☑コツコツと勉強を進められる人
  • ☑学費を抑えたい人

通信講座

独学で知識を身に付けられる自信はないけれど、学校に通うのも難しいという場合は、通信講座の利用がおすすめです。

通信講座の場合、自分のペースで勉強を進めることができ、また、わからない所は質問して解決することができます。費用は各社によって違いますが2万円~6万円が相場となります。

通信講座ががおすすめの人

  • ☑自分のペースで勉強したい人
  • ☑費用を抑えながらも誰かに質問できる環境は欲しい人
  • ☑在職中や育児中の方で、隙間時間で勉強したい人
  • ☑できるだけ在宅で勉強したい人

医療事務の資格を独学で取る場合に注意したいこと

独学による勉強方法は、自分のペースで勉強でき学費を抑えられるのが大きなメリットですが、医療事務に関する法律は定期的に改正が行われるため、最新の情報を収集するようにしましょう。

また、医療事務の勉強は専門用語の理解やレセプトの作成方法など専門知識を学ぶ必要があります。独学だと質問することができないため、効率的に学習したい場合はスクールや通信講座を検討するといいでしょう。

まとめ

医療事務の仕事に就くために資格は必須ではありませんが、資格をとっておくと就職に有利だったり、就業後も自信を持って業務にあたれます。 資格を取る際は、自分の目的に合った資格を選ぶことが大切です。

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