医療事務の仕事内容とは?
一日の流れや仕事内容を徹底解剖

医療事務の仕事は、長く続けられることや雇用が安定しているという理由から、高い人気を誇っています。 医療事務経験者だけではなく、他の業種からの転職や子育てがひと段落した後に新しい活躍の場として考える方も多いようです。

今回は、医療事務のお仕事に就きたいと考えられている方のために、医療事務のお仕事内容と一日の流れをご紹介します。

谷京香講師

この記事の監修者
谷 京香

たのまな医療事務通信講座の講師、講座監修/ ヒューマンアカデミー医療事務講座の講師、講座監修 / ヒューマンリソシア株式会社 メディカル部門 マスターズマネージャー

医療事務の仕事とは?主な業務内容は3つ

医療機関では、医師や看護師以外にも多くの人々が働いています。受付で「どうされましたか」と声をかけられたり、「お大事に」と優しく言葉をかけられたことはありませんか? 実は、これが医療事務のスタッフなのです。 「医療事務」とは、患者さんへの応対、医師や看護師のサポート、医療費の請求など医療機関の運営をスムーズに行うために必要なさまざまな業務を担うお仕事です。 その中でも、医療事務の業務内容は主に下記の3つとなります。

1.受付業務

医療事務の代表的な仕事内容は医療機関の受付業務です。 受付は来院した患者さんの最初の対応場所となり、医療機関の印象にも影響するため、患者さんに安心を与える接遇マナーが必要となります。

受付では、受診の手続きや保険証等の確認、各診療科への案内などを行います。

2.レセプト業務

レセプトとは、医療機関が医療費を請求するための書類「診療報酬明細書」のことを指します。 レセプトを作成・点検したり、審査支払機関に提出したりするのがレセプト業務の主な業務内容です。

現在、国民皆保険制度により患者さんは医療費の1~3割を負担すれば済みますが、 残りの7~9割は患者さんが加入している健康保険組合や共済保険組合などに医療機関が請求しなければなりません。 この請求にあたり、医療機関は「レセプト」と呼ばれる書類を作成し、審査支払機関に提出することになっています。 レセプト業務は内容に誤りがないか点検する作業をおこなうため、正確さとともに医療に関する専門知識が必要になります。

3.クラーク業務

入院施設のある規模が大きい医療機関では、外来診療や入院の際にさまざまな事務手続きが必要になります。 「クラーク」は、その際に必要となる検査のオーダーや入退院の処理、医療スタッフのサポートなどを行います。 業務には、外来クラークと病棟クラークの2種類があり、それぞれ業務内容が異なります。

外来クラークは、各診療科での窓口対応をはじめ、検査データの準備や検査の案内など医師をサポートする業務も行います。

病棟クラークは、基本的に病棟のナースステーションやフロア内で入退院の事務手続きや、入院患者さんの書類作成や入院患者さんと各部門(診療・検査・会計など)との連絡調整などを行います。

医療事務として働ける医療機関はどこ?

医療事務の職場は主に医療機関ですが、一口に医療機関と言っても病院だけではありません。診療所(クリニック)や訪問看護ステーションなどもあります。 厚生労働省の「医療施設調査」によると、2022年5月時点での医療機関数は約18万件あり、活躍の場はとても多いと言えるでしょう。

出典元:厚生労働省「医療機関調査」

仕事内容はどの医療機関でも基本的に変わりませんが、求められることが少し異なります。

勤務先 仕事内容 特徴
病院 ・受付
・外来
・病棟
・レセプト作成 など
※配属される部署によって異なる
・比較的大規模な病院では担当業務は分業化
診療所(クリニック) ・受付
・会計
・電話対応
・レセプト作成
・患者対応 など
・有床診療所と無床診療所の2種類がある
・一人で幅広い業務を担うことが多い
訪問診療所・訪問看護ステーション ・電話対応
・カルテの代行入力
・レセプト作成 など
・診療報酬のほかに介護報酬に関する知識が求められる
治療院 ・受付
・会計
・電話対応
・レセプト作成 など
・開院時間に応じて勤務時間帯が遅くなる可能性がある
・健康や美容に関心が高い人向け

病院

医療法では、20人以上の患者が入院できる施設を病院と定めています。病院の規模はさまざまですが、1,000床以上を有するところもあります。 比較的大規模な病院では、同じ医療事務でも受付業務やレセプト業務など担当業務が分担されているケースが多いです。 そのため、特定の業務に取り組みたい、専門性を高めたい人におすすめです。

診療所(クリニック)

診療所には有床診療所と無床診療所の2種類があり、一般的には「クリニック」と呼ばれています。 病院に比べて規模が小さいため、大きな病院とは違い、受付業務やレセプト業務など一人で幅広い業務を担うことも多いです。

美容皮膚科や美容外科などの自由診療が多い診療所では、カウンセリング業務を兼ねることもあります。 診療所では医療事務に関する多くの業務が経験できるため、幅広く業務の知識を身につけたい人におすすめです。

訪問診療所・訪問看護ステーション

高齢化に伴い、訪問診療所や訪問看護ステーションなどの在宅医療へのニーズが高まっています。 在宅医療では、医師の他に看護師や理学療法士といった他の医療専門職、ケアマネジャーなどと連携して訪問看護サービスを提供するため、 他の医療機関と違って業務で関わるスタッフが多くなります。

また、在宅医療では医療保険と介護保険、いずれかの公的保険を使って利用する場合があります。 そのため、診療報酬のほかに介護報酬に関する知識が求められるため、医療事務と同時に介護事務の資格を取得しておくと仕事の幅が広がります。

治療院

医療事務は、接骨院や鍼灸院、整体院などの治療院でも活躍できます。 病気の予防や美容目的の場合は保険適用外になるため自由診療になりますが、治療院でも保険診療を行うため、レセプト業務は必須になります。 治療院では新しい代替医療を取り入れているところも多いため、健康や美容への意識が高い人におすすめです。

医療事務の一日の流れ

このように様々な業務を行う医療事務のスタッフですが、毎日どのように働くのか、診療所(クリニック)の一日の仕事の流れを一例としてご紹介します。

午前の仕事の流れ

8:00 開院前の準備

まずは、診療開始前に次のような開院準備をおこないます。

・院内の清掃
・釣り銭の準備
・予約状況の確認
・検査の有無の確認 など

受付開始の30分~1時間程度前から開院準備を始めるケースがほとんどです。 必要な情報はスタッフ間で共有し、診療がスムーズにおこなえるように準備します。

9:00 午前診療の業務

診療所によりますが、8:00~9:00頃に受付または診療を開始します。 来院した患者さんに対して診察の受付や保険証の確認をおこない、必要に応じてカルテや診察券を作成します。

診療が終わるとカルテの内容に沿って会計をおこない、患者さんへの対応は終了します。

13:00 お昼休憩

一般的な診療所では午前と午後で診療時間が分かれています。 午前診療の最後の患者さんが帰られてから午前中の診療は終わりとなります。

休憩時間中も患者さんや取引業者から電話が入ることもあるため、スタッフは交代で休憩をとるケースも多いようです。

午後の仕事の流れ

14:00 午後の診療準備

午前中と同様に診療の準備を行います。

16:00 午後の診療業務

午前と同様に受付やクラーク業務などをおこないます。

19:00 閉院後の業務

すべての診療が終了したら入出金を確認し、問題がなければレジを閉めます。 必要に応じて清掃やミーティング、レセプト業務をおこない、1日の業務は終了です。

退勤時間は医療機関によって異なりますが、一般的な医療機関であれば18~20時頃が目安です。 月末月初はレセプト業務で繁忙期になるため、残業をおこなうこともあります。

医療事務の勤務スタイルは?

医療事務の魅力の一つは、ライフステージに合わせて柔軟に合わせることができる勤務スタイル。それぞれの勤務スタイルの特徴とメリット・デメリットをご紹介します。

フルタイム勤務

自分の仕事をしっかりと持って、安定した収入を得たい人には正社員がおすすめです。

メリット・デメリット
メリット デメリット
・収入が安定している
・社会保険完備
・賞与あり
・有給休暇あり
・福利厚生制度が充実している
・長期休暇が取りにくい
・土日祝休みでない場合もある

パートタイム勤務

仕事よりも家庭を優先したい人には、アルバイトやパートタイムでの勤務が向いているでしょう。

メリット・デメリット
メリット デメリット
・勤務時間を調整しやすい
・求人募集が多い
・年齢制限があまりない
・残業、休日出勤が少ない
・月によって収入が不安定になる

派遣勤務

さまざまな病院に派遣されて仕事をする派遣社員の働き方は、 いくつかある求人の中から自分のやりたい仕事を選べるので、スキルを伸ばしたい業務に絞って経験を積むこともできます。

メリット・デメリット
メリット デメリット
・勤務先、勤務形態、仕事が選べる
・自分の生活条件に合わせやすい
・正社員登用もある
・休日出勤、残業が少ない
・社会保険完備のところもある
・賞与がない
・条件が合わなければ派遣先がない

まとめ

医療事務は全国にある医療施設で活躍できるため、場所を選ばずに仕事を探すことができるでしょう。 医療事務に求められるスキルは勤務先の病院やクリニックの規模に応じて変わってきますが、一番大切なことは患者さんへのホスピタリティです。 病気やケガによって、患者さんや家族の方々は不安を感じていますので、誠実に対応できることが医療事務では求められます。 専門的な業務をこなす医療事務は、医療事務未経験の方でも目指すことはできますが、資格を取得すると採用などで有利に働きます。 通信講座などをうまく活用して、有利に職探しを進めていきましょう。

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