登録販売者とは?仕事内容や資格取得の難易度、おすすめの勉強方法も解説!
登録販売者資格は、医薬品販売に関わる専門資格です。高齢化が進む現代において、そのニーズは増加しており、資格を取得することで就職に直結するチャンスが広がります。また、試験勉強で身につく一般用医薬品の知識は、自分や家族の健康管理にも大いに役立つでしょう。
この記事では、登録販売者試験の合格率や難易度、試験の概要について詳しく解説します。勉強方法のポイントや資格取得のメリットについても触れていきますので、登録販売者を目指す人はぜひ参考にしてください。
登録販売者とは?どんな資格?
登録販売者は、風邪薬や鎮痛剤など、処方箋なしで購入できる一般用医薬品を販売するための専門資格です。
この資格は、改正薬事法によって新設され、第2類・第3類医薬品の情報提供や販売を行うことができます。
一度取得すれば生涯有効で、ドラッグストアや薬局での医薬品販売だけでなく、介護業界などでも健康管理や医薬品提供に役立つため、幅広い分野で活躍できる注目の資格です。
登録販売者の仕事内容
2006年と2009年の薬事法改正により、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどで医薬品を購入できるようになり、それまで薬剤師のみが販売できた一般用医薬品の一部を、登録販売者も販売できるようになりました。
登録販売者の仕事内容は、第2類・第3類医薬品の販売を行い、購入者に対して使用上の注意点を分かりやすく説明することです。
また、購入者の健康や医薬品に関する相談に対してアドバイスも提供します。
登録販売者は、薬剤師に次ぐ医薬品販売のプロフェッショナルとして、安全で適切な医薬品の使用を促す重要な役割を担っています。
登録販売者と薬剤師との違い
薬剤師は、処方箋が必要な医薬品を含むすべての医薬品を取り扱うことができますが、登録販売者が取り扱えるのは一般用医薬品の中でも、第2類と第3類医薬品に限られます。
第2類医薬品は、風邪薬や鎮痛剤など比較的軽い症状に使われる薬で、第3類医薬品はビタミン剤や整腸剤などが含まれます。
登録販売者が取り扱えない第1類医薬品とは、副作用や相互作用のリスクが特に高い医薬品であり、薬剤師による対面販売が義務付けられているものです。
ただし、一般用医薬品の中で第1類医薬品が占める割合は比較的少ないため、登録販売者は大部分の一般用医薬品を取り扱えることになります。
登録販売者試験の合格基準・難易度はどれくらい?
就職にもつながり、日常生活にも役立つ登録販売者ですが、実際の試験の合格基準や難易度はどうでしょうか。
ここからは、登録販売者試験の合格基準や難易度について詳しく見ていきましょう。
登録販売者試験の合格率とは?
登録販売者の最新の合格率は、令和5年度(2023年度)の全国平均で43.7%でした。
これは、厚生労働省が定める国の資格制度の中では比較的取得しやすい資格と言えます。
登録販売者の過去7年分の平均合格率と、都道府県別の最低合格率と最高合格率の推移は以下の表のとおりです。
実施年度 |
平均合格率 |
最低合格率 |
最高合格率 |
---|---|---|---|
2023年度 |
43.7% |
21.4% |
54.9% |
2022年度 |
44.4% |
29.8% |
59.3% |
2021年度 |
49.3% |
32.7% |
68.8% |
2020年度 |
41.5% |
30.1% |
58.1% |
2019年度 |
43.4% |
23.4% |
64.3% |
2018年度 |
41.3% |
19.5% |
58.6% |
2017年度 |
43.5% |
26.7% |
62.4% |
出典:厚生労働省/これまでの登録販売者試験実施状況等について
登録販売者と薬剤師の難易度の違いとは
最も大きな違いは受験資格です。薬剤師の国家試験を受けるためには6年制の薬学部を卒業する必要がありますが、登録販売者は学歴や実務経験を問わず、誰でも受験可能です。
試験内容も異なり、薬剤師は薬理学、化学、生物学、病態学、法律などより専門的で多岐にわたる科目から全345問の国家試験を受験しますが、登録販売者は全120問の試験です。
薬剤師と比較すると、登録販売者の方が試験の難易度は低いと言えるでしょう。
登録販売者試験の概要について
試験形式や試験時間
登録販売者試験はマークシート方式で実施され、全120問が出題されます。
試験は2部に分かれており、それぞれ60問ずつ、120分で行われます。
試験の合計時間は240分です。
休憩時間は自治体によって異なり、午前と午後の間に昼食時間を設ける場合や、午後から夕方にかけて前半と後半に分けて行う場合があります。
試験科目は第1章から第5章までの5つに分かれていますが、どの項目が前半・後半で実施されるかは自治体によって異なります。
試験当日のスケジュールは事前に確認しておくことをおすすめします。
出題範囲と出題数
試験科目ごとの問題数と試験時間は以下の通りです。
- 医薬品に共通する特性と基本的な知識:医薬品の定義、分類、作用機序、副作用、相互作用など(20問/40分)
- 人体の働きと医薬品:人体の構造と機能、各臓器の働き、病気の原因と症状、医薬品の作用など(20問/40分)
- 主な医薬品とその作用:各種医薬品の分類、成分、作用機序、使用方法、注意事項など(40問/80分)
- 薬事に関する法規と制度:薬事法、医薬品医療機器等法、薬剤師法、医薬品の販売制度、広告規制など(20問/40分)
- 医薬品の適正使用と安全対策:医薬品の適正使用、服薬指導、保管方法、医薬品の安全性確保、リスク管理など(20問/40分)
計120問/240分
合格基準について
登録販売者に合格するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 総得点の70%以上:試験全体の正答率が70%以上(全国共通の基準)
- 各試験項目の正答率:各試験項目ごとに、都道府県知事が定める正答率をクリアしていること(都道府県により異なり、35%~40%程度が目安)
なお、資格取得自体には実務経験は必要ありません。
登録販売者試験の申込方法
登録販売者試験の申請書の入手方法
受験の申込み方法は以下の3通りあります。
- 直接受け取る方法
各都道府県の試験管轄機関、保健所、健康福祉センターなどで直接受け取ります。
- 郵送で受け取る方法
各都道府県の試験管轄機関に郵送で請求することができます。
- インターネットでダウンロードする方法
多くの都道府県では、公式ホームページから申請書類をダウンロードできます。
ただし、インターネットからのダウンロードに対応していない都道府県もあるため、必ず各都道府県の案内を確認しましょう。
登録販売者試験の公示時期とは
公示とは、試験の日程や申込期間、受験資格、試験会場などの詳細が公式に発表されることです。
登録販売者試験の公示時期や試験日は毎年変わるため、受験する自治体のホームページで確認することが大切です。
例えば2024年度の場合、東日本では5月から公示され、試験は8月末から9月初旬に実施されます。西日本では公示が5月から8月にかけて行われ、試験は8月から12月にかけて実施されます。
登録販売者試験の受付期間と申請方法
登録販売者試験の受付期間と申請方法は自治体によって異なります。
一般的には、受付期間は10日から2週間程度ですが、期間が短い自治体もあります。
申請方法は、郵送申請か電子申請の2通りです。
受験する年の4月になったら、希望する自治体のホームページで情報が掲載されているか確認することをおすすめします。
登録販売者試験の受験手数料はいくら?
12,000円~18,200円程度
受験手数料も各都道府県によって異なるので、事前に確認が必要です。
2024年度の手数料で最も安いのは関西広域連合(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、徳島県)で12,800円、最も高いのは北海道18,200円です。
登録販売者の試験日・申し込み期限とは
試験は年1回、都道府県によって異なる試験日で実施されます。令和6年度(2024年度)の試験日は以下の表のとおりです。
試験日 |
都道府県 |
---|---|
8月28日(水) |
北海道・青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県 |
8月29日(木) |
茨城県・栃木県・群馬県・新潟県・山梨県・長野県 |
8月31日(土) |
福井県・奈良県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・和歌山県・徳島県 |
9月4日(水) |
富山県・石川県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県 |
9月8日(日) |
埼玉県・東京都・神奈川県・千葉県 |
11月13日(水) |
鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・香川県・愛媛県・高知県 |
12月15日(日) |
福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県 |
申込み期限も都道府県によって異なりますが、基本的には試験日の約3ヶ月前から申込みが開始される場合が多いです。令和6年度(2024年度)の申込み期限は以下の表のとおりです。
申込み期限 |
都道府県 |
---|---|
5月14日(火)~6月11日(火) |
福島県 |
5月20日(月)~5月31日(金) |
埼玉県・東京都・神奈川県・長野県 |
5月20日(月)~6月3日(月) |
静岡県 |
5月20日(月)~6月7日(金) |
千葉県 |
5月23日(木)~6月6日(木) |
群馬県 |
5月27日(月)~6月10日(月) |
福井県・奈良県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・和歌山県・徳島県 |
5月28日(月)~6月13日(木) |
新潟県 |
5月29日(水)~6月11日(火) |
岩手県 |
6月3日(月)~6月14日(金) |
山梨県・石川県・岐阜県 |
6月4日(火)~6月25日(火) |
北海道・宮城県・秋田県・山形県 |
6月5日(水)~6月18日(火) |
茨城県 |
6月10日(月)~6月14日(金) |
愛知県 |
6月10日(月)~6月21日(金) |
富山県・三重県 |
6月12日(水)~6月21日(金) |
栃木県 |
6月19日(水)~6月25日(火) |
青森県 |
8月2日(金)~8月16日(金) |
鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・香川県・愛媛県 |
8月16日(金)~8月30日(金) |
高知県 |
8月19日(月)~8月30日(金) |
福岡県・佐賀県 ・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県 |
8月26日(月)~9月6日(金) |
沖縄県 |
登録販売者の資格勉強する際のポイントとは
ポイント①受験地のブロックに合わせて試験対策をする
登録販売者試験は全国を8つのブロックに分けて実施されます。
基本的にはブロックごとに同じ試験問題が出題されるので、まずは自分が受けようと思う都道府県がどのブロックに該当するかを確認してください。
ブロックごとに難易度や問題の傾向や合格率も異なります。自分が受験するブロックの過去問題集を使って、試験の対策をしてください。
ポイント②自分の苦手な分野を見つけて克服する
登録販売者試験の合格基準は、全体の正答率が70%以上であることと、試験項目ごとの正答率が都道府県が定める一定の割合(35〜40%程度)を超えるという2つの基準の両方を満たす必要があります。
つまり、全体の正答率がいくら高くても、苦手な分野があり、正答率が低い項目がひとつでもあると合格できません。苦手な分野がある場合は、重点的に学習するなど、早めに対策をすることが重要です。
ポイント③試験問題の改訂部分をチェックする
厚生労働省が毎年3月末頃に公開する「登録販売者試験問題作成に関する手引き」の最新版を入手し、改訂箇所をしっかり確認しましょう。新しく追加された内容や変更された部分は出題される可能性が高いため、改訂内容を重点的に学習しましょう。
ポイント④受験予定ブロックの過去問を繰り返し解く
登録販売者試験では、過去問と類似した問題が多く出題される傾向があるので、試験の出題傾向や形式に慣れることができます。
また、問題を解いて解説を読むことで、医薬品に関する知識を効果的に身につけることができます。さらに、実際の試験時間を意識しながら問題を解けば、本番での時間配分の練習にもなります。
ポイント⑤効率的に時間を使い学習をする
仕事や家事などで忙しい場合でも、毎日数分でも勉強する時間を確保しましょう。
通勤・通学中の移動時間や、待ち時間、家事の合間などの隙間時間を有効に使って、学習を習慣化しましょう。
短時間でも継続的に学習することで、知識が定着しやすくなります。1日の終わりにその日学んだ内容を復習し、週末には1週間分の復習を行うと効果的です。
ポイント⑥普段から身近な薬の情報をキャッチする
普段から身近な薬や病気の情報を積み重ねることも、登録販売者試験の勉強に役立ちます。
自分や家族の薬を購入する際は、パッケージや添付文書に記載された成分の効能・効果や副作用などに注目しましょう。
登録販売者は働きながら取得することはできる?
登録販売者資格は、働きながらでも取得することが可能です。通勤時間や帰宅後の時間など、限られた時間の中で学習スケジュールを上手に調整し、効率よく勉強することが大切です。試験の日程は平日になることもありますが、3ヶ月前には発表されるため、事前に仕事の予定を調整することは可能です。
登録販売者の資格取得のメリットと注意点
【メリット①】実務経験なしでも受験することができる
登録販売者試験は、学歴や実務経験を問わず誰でも受験できる試験です。
2015年以前は受験資格として実務経験が求められていましたが、現在は実務経験なしで受験できるようになりました。
登録販売者は医薬品についての専門的な知識が求められる仕事ですが、資格取得を考えた時点で知識がなくても、十分な学習時間を確保し集中して学習を進めれば、試験に合格することは可能です。
【メリット②】一度取得したら資格が失効しない
登録販売者資格は、一度取得すれば資格が失効しないのが大きなメリットです。
将来的に家庭の事情や転職などで一時的に職を離れる場合でも、再就職の際に再度資格を取得する手間がかからないのは大きなメリットです。
資格を取得した後、実際に業務を始める前に、勤務先の店舗がある都道府県に「販売従事登録」を行う必要があります。
この登録を済ませることで、正式に登録販売者として一般用医薬品の販売業務を行うことができるようになります。
【注意点】実務従事証明書を取得したい人は注意
正式な登録販売者として働くためには、試験に合格して販売従事登録を行うだけでなく、実務経験も必要です。
実務経験を証明するための書類が「実務従事証明書」です。「実務従事証明書」を取得するには、「管理者要件」と呼ばれる以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 直近5年以内に2年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験
- 直近5年以内に1年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験に加え、継続的研修を受講し追加的研修を修了
- 通算1年以上かつ累計1,920時間以上の実務経験かつ過去に店舗管理者等としての就業経験(直近5年以内の制約なし)
上記の基準を満たさない場合は「管理者要件なしの登録販売者」となり、研修扱いとなります。研修中は単独で業務を行うことができません。
登録販売者は実務未経験でも働くことはできる?
未経験でも登録販売者として仕事を見つけることは十分可能です。
受験資格に実務経験は不要なので、試験合格後に未経験で勤務を始める人も多いです。
未経験者向けの求人も多く、働きながら実務経験を積んでキャリアアップを目指せます。
まずは薬局やドラッグストアなど、複数の薬剤師や登録販売者がいる店舗で実務経験を積むことをおすすめします。
実務経験がない場合、最初は「研修中」として勤務し、薬剤師や正式な登録販売者の指導のもとで業務を行います。
一定の実務経験を積んだ後、実務従事証明書を取得することで、正式な登録販売者として認められます。
登録販売者の資格取得後すぐに働かない際のリスクとは
【リスク①】実務経験を積むことができない
正式な登録販売者になるためには、一定の実務経験(管理者要件)を満たす必要があります。
実務経験を積まないと「研修中」の扱いが続き、単独での医薬品販売や店舗責任者としての勤務ができません。
これにより、働ける場所が制限されたり、期待した給与を得られない可能性があります。
【リスク②】医薬品の知識がアップデートするのが難しい
試験のために勉強して身につけた知識も、業務で活用しなければ忘れてしまうことが多いでしょう。
また、医薬品に関する法律や規制は頻繁に変更されるため、最新の知識を維持することが重要です。
登録販売者試験に合格してから働き始めるまでに期間が空くと、これらの変更に対応できず、知識が古くなる可能性があります。
登録販売者として働くことで、日々の業務で知識を活用し、最新の医薬品情報や法規制の変更に対応する研修も受けることができます。
資格取得後すぐに働かない場合、再度最新の知識をインプットする手間がかかる可能性があります。
「登録販売者完全合格講座」ならヒューマンアカデミー
初めて登録販売者の学習をする人や、仕事や子育てと両立して勉強したい人、一発で合格を目指す人におすすめなのが、ヒューマンアカデミーの登録販売者完全合格講座(eラーニングコース)です。
専門家が作成した初学者向けのオリジナル教材を使用し、最短3ヶ月で合格を目指せる内容となっています。テキストに連動した動画を使って学習し、全都道府県の試験問題を収載した過去問で実践力を身につけます。
添削課題はプロの講師が採点し、受講期間中は何度でも質問できます。
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まとめ
セルフメディケーションとは、自分の健康に責任を持ち、軽い体調不良を一般用医薬品で自己ケアすることです。
この考え方が広がる中で、登録販売者の需要が高まっています。ドラッグストアだけでなく、医薬品を扱う店舗が増えており、就職のチャンスも広がっています。
未経験からでも、働きながらでも目指せる登録販売者資格を取得してみませんか。自分に合った方法で、効率的かつ計画的に学習を進めて合格を目指しましょう。