【過去問あり】賃貸不動産経営管理士試験の難易度や勉強時間など

賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理に関する国家資格です。今後需要の増加が期待できるほか、不動産投資をおこなう上でも役立ちます。この記事では、試験の合格率から見る難易度や試験内容、日程、受験料などを解説します。賃貸不動産経営管理士になるための勉強方法や必要な勉強時間のほか、宅建士やマンション管理士との違いも説明しますので、資格取得を検討している方はぜひ参考にしてください。

賃貸不動産経営管理士の試験難易度

賃貸不動産経営管理士は難関とまではいかないものの、取得には相応の努力が必要です。まずは、賃貸不動産経営管理士がどのような資格なのか見ていきましょう。

賃貸不動産経営管理士とは

賃貸不動産経営管理士試験は、賃貸住宅の管理に関する知識や技能を問う試験です。2007年から一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会が実施しており、2021年からは国家資格になりました。

試験に合格したうえで実務経験などの要件を満たすと、賃貸不動産経営管理士として登録できます。賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業をおこなう上で配置が義務付けられている「業務管理者」の要件となるため、不動産業界でニーズの高い資格です。

賃貸不動産管理士が担当するのは、主に次のような業務です。

  • 入居者の募集や契約に関する業務
  • 住宅のクリーニング
  • 法定点検
  • 空室の管理
  • 住民からのクレームやトラブルの対応
  • 契約終了時の退去立ち会い      など

賃貸物件の管理はもちろん、オーナーが資産を有効活用するためのサポートや入居者が安心して暮らすための手助けなど、賃貸住宅に関わる人々のパイプ役となる重要な役割を果たします。

国家資格との合格率比較から見る難易度

賃貸不動産経営管理士の難易度を知るために、まずはほかの国家資格の合格率と比較してみましょう。

資格試験

合格率

受験者数

合格者数

賃貸不動産経営管理士

28.2%

28,299人

7,972人

宅地建物取引士

17.2%

233,276人

40,025人

マンション管理士

10.1%

11,158人

1,125人

社会保険労務士

6.4%

42,741人

2,720人

司法書士

5.2%

13,372人

695人

※2023年度に実施された試験の合格率・受験者数・合格者数を比較

最新の賃貸不動産経営管理士試験の合格率は28.2%で、社会保険労務士や司法書士などの難関国家資格に比べると合格しやすいといえます。また、同じ不動産系資格の宅地建物取引士(宅建士)やマンション管理士に比べても難易度は低めです。

しかし、合格できるのは4人に1人程度ということを考えると、決して簡単とはいえません。

過去の合格率・合格点から見る難易度

賃貸不動産経営管理士試験の結果は、過去7年で次のように推移しています。

年度

受験者数

合格者数

合格率

合否判定基準

2017年度

16,624名

8,033名

48.3%

27点(40問中)

2018年度

18,488名

9,379名

50.7%

29点(40問中)

2019年度

23,605名

8,698名

36.8%

29点(40問中)

2020年度

27,338名

8,845名

29.8%

34点(40問中)

2021年度

32,459名

10,240名

31.5%

40点(50問中)

2022年度

31,687名

8,774名

27.7%

34点(50問中)

2023年度

28,299名

7,972名

28.2%

36点(50問中)

賃貸不動産経営管理士試験の受験者数は、国家資格になったことや不動産業界における需要の高まりを受けて増加傾向です。合格率は以前は50%程度ありましたが、国家資格となった2021年度以降は30%前後で推移しています。

なお、賃貸不動産経営管理士試験は〇〇点以上取ったら合格という絶対評価ではなく、一定割合の受験者が合格する相対評価のため、合格に必要な点数は試験ごとに異なります。ここ数年の傾向でいうと、正答率7~8割程度が合格ラインといえそうです。

賃貸不動産経営管理士試験の内容

賃貸不動産管理士試験の実施は年1回で、毎年11月におこなわれます。ここからは、試験の内容について簡単に説明しますので、さらに詳しく知りたい方は「令和6年度 賃貸不動産経営管理士試験実施要領 一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会」をご覧ください。

試験日・受験料・出題形式

賃貸不動産管理士の試験日は例年11月第3日曜日で、令和6年度は11月17日です。試験開始は午後1時からで、試験時間は120分間です。

受験手数料は12,000円で、インターネットで申し込む場合は別途事務手数料400円が必要です。

出題形式は四肢択一で、出題数は50問です。ただし、2023年度または2024年度の賃貸不動産経営管理士講習修了者は試験が一部免除され、45問となります。

なお、必要な受験資格はなく、日本国内に居住する人であれば年齢や学歴などを問わず受験できます。

試験内容

賃貸不動産経営管理士試験では、賃貸物件管理に関する幅広い知識が問われます。2024年度試験の出題範囲は次の通りです。

  1. 管理受託契約に関する事項
  2. 管理業務として行う賃貸住宅の維持保全に関する事項
  3. 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項
  4. 賃貸住宅の賃貸借に関する事項
  5. 法に関する事項
  6. 1から5までに掲げるもののほか、管理業務その他の賃貸住宅の管理の実務に関する事項

法律などに関する問題は、2024年4月1日現在施行の規定(関連告示・通達等含む)に基づいて出題されます。

賃貸不動産経営管理士になるには

賃貸不動産経営管理士になるには試験に合格するだけでなく、次の2つの登録要件を満たす必要があります。

  1. 管理業務に関し2年以上の実務の経験を有する者、またはその実務の経験を有する者と同等以上の能力を有する者(賃貸住宅管理業務に関する実務講習の修了をもって代える者等を指す)
  2. 賃貸不動産経営管理士試験の合格から1年以上が経過していない者または賃貸不動産経営管理士登録講習を修了した者

つまり、2年以上の実務経験を持つ試験合格後1年以内の方以外は、登録前に講習の受講が必要です。なお、賃貸不動産経営管理士の登録料は6,600円(税込)で、有効期間は5年間です。

出典:賃貸不動産経営管理士・業務管理者になるまでの流れ

賃貸不動産経営管理士になるための勉強

賃貸不動産経営管理士試験に合格するためには、どの程度の勉強時間が必要なのでしょうか。勉強方法のポイントや過去問題の例も紹介します。

必要な勉強時間

賃貸不動産経営管理士試験に合格するために必要な勉強時間は、100~250時間といわれています。すでに法律の知識がある方は100時間程度の勉強で合格を目指せますが、実務経験のない方や初学者は200時間以上の勉強時間を確保しましょう。

200~250時間勉強するには、1日1時間で7~8ヵ月、1日2時間で3.5~4ヵ月程度必要です。試験は年1回なので、スケジュールを組んで計画的に勉強を進めることが大切です。

勉強方法のポイント

賃貸不動産経営管理士試験に向けての勉強方法のポイントは、次の4つです。

  • 試験に出やすい分野を重点的に勉強する
  • インプットとアウトプットをバランスよくおこなう
  • できるだけ毎日勉強する
  • 時間配分に慣れる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

<試験に出やすい箇所を重点的に勉強する>

賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲は広いため、出題頻度の低いところまで完璧に覚えるのは困難です。過去問から出題傾向を把握して、試験に出やすい箇所を重点的に勉強しましょう。

<インプットとアウトプットを繰り返しおこなう>

勉強というと、テキストを読んだり動画を見るなどのインプットに重点を置きがちですが、同じくらい大切なのが練習問題や過去問を解くアウトプットです。

インプットした知識はアウトプットしないと記憶として定着しにくく、せっかく覚えても忘れてしまうことがあります。「インプット学習後は問題を解き、解説を読んで再度問題を解く」というように、インプットとアウトプットを繰り返して着実に知識を身につけましょう。

<できるだけ毎日勉強する>

せっかく勉強しても、前回から日数が開くと覚えた内容を忘れてしまいがちです。例えば同じ7時間でも、まとめて週に1回より毎日1時間勉強したほうが学習内容が身につきやすいです。

平日に学習時間の確保が難しい方は、通勤・通学時間や昼休みや家事の合間などのすきま時間を有効利用すると良いでしょう。

<時間配分に慣れる>

賃貸不動産経営管理士の試験時間は120分で、50問出題されます。問題の文章はそれほど多くないため、比較的ゆとりを持って解答できます。

ただし、時間配分を誤ると焦って間違えたり、時間が足りなくなる場合があります。時間を計りながら50問通して解き、余裕を持った時間配分ができるよう慣れておきましょう。

賃貸不動産経営管理士試験の過去問

賃貸不動産経営管理士協議会のホームページでは過去9回の試験問題一覧を公開しています。ただし問題と解答のみなので、解説まで知りたい方は複数の出版社から発売されている過去問集を利用すると良いでしょう。

例えば、2023年度試験では次のような問題が出題されています。

【問題】管理受託契約重要事項説明に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 管理業務の実施方法に関し、回数や頻度の説明は不要である。
  2. 入居者からの苦情や問い合わせへの対応を行う場合、その対応業務の内容についての説明は不要である。
  3. 管理業務を実施するのに必要な水道光熱費が報酬に含まれる場合、水道光熱費の説明は不要である。
  4. 賃貸人に賠償責任保険への加入を求める場合や、当該保険によって補償される損害について賃貸住宅管理業者が責任を負わないこととする場合、その旨の説明は不要である。

 
【正解】 3

賃貸不動産経営管理士の将来性はある?

少人数の世帯の増加や持ち家志向の低下などにより賃貸住宅の需要は増加傾向と予想されるため、賃貸不動産経営管理士の将来性は高いといえるでしょう。

また、2021年の賃貸住宅管理業法制定により、200戸以上を管理する賃貸不動産業者は、事務所ごとに業務管理者1名以上の設置が義務づけられました。業務管理者になれるのは賃貸不動産経営管理士または指定の講習を受けた宅建士のみのため、賃貸不動産経営管理士は安定した需要が見込まれます。

さらに、賃貸不動産経営管理士として得た建物管理や空室対策などの知識は、不動産による資産形成や資産運用にも生かせます。

宅建士・マンション管理士との比較

賃貸不動産経営管理士資格を取得した後は、さらに難易度の高い宅建士やマンション管理士を目指す人も多いです。それぞれの仕事の違いを比較してみましょう。

仕事内容で比較

賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理についての知識や技能を持った専門家です。主な仕事内容は、入居者の募集や契約業務・賃貸住宅や関連設備の維持管理・入居者のトラブル対応・退去後のクリーニングや原状回復工事の対応・家賃の収納業務や改定など多岐にわたります。

宅建士は不動産取引の専門家で、宅地建物取引業を営むためには5人に1人以上の配置義務があります。「重要事項の説明」「重要事項説明書への記名・押印」「契約書への記名・押印」という独占業務があり、不動産の紹介や内覧、契約書の作成などをおこないます。

マンション管理士は、マンションの管理組合の管理者や区分所有者(分譲マンションの購入者)の相談に応じ、アドバイスやサポートをおこなうマンション管理の専門家です。主な仕事内容は、住民トラブル解決に向けての交渉・管理費や修繕積立金の管理・修繕工事の計画作成・管理規約の作成や変更などです。

まとめ

賃貸不動産経営管理士は、不動産業界でニーズの高い資格です。宅建士やマンション管理士に比べると難易度は低めなため、不動産関連資格の入門編として取得するのもおすすめです。

難易度は低いといっても合格率は30%程度で、法律の知識がない状態からスタートすると200~250時間程度の勉強が必要です。試験は年1回のみなので、計画的に学習を進めて合格を目指しましょう。

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