宅建って?何ができるの?資格試験概要や合格率、勉強法を知ろう! | TECHのススメ
宅建は毎年約20万人以上が受験する日本最大規模の国家資格です。試験勉強を通じて得た知識は実務で役立ち、不動産業界でのキャリアアップのほか、他業種での仕事にも役立ちます。今回は、宅建の試験概要から合格率の推移まで詳しく解説します。さらに、宅建の資格を持つことによるメリットと合格するための対策や勉強方法も紹介します。宅建の受験に興味がある方はぜひ参考にしてください。
宅建って?何ができるようになるの?
宅建とは、「宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)」の略称で、不動産取引の専門家を示す国家資格です。宅地建物取引士になるには、まず、宅建業法で定める宅地建物取引士資格試験に合格する必要があります。宅建試験に合格したら、宅地建物取引士証の交付を受けることで、宅建士として従事することができます。
宅建士は、不動産取引の専門家として、不動産の売買や賃貸物件のあっせんをする際に、専門知識を有していないお客様に対して「登記」や「不動産の広さ」など契約の根幹に関わる「重要事項の説明」を行うことができます。
宅建士の独占業務
宅建士には、不動産取引において宅建士だけに許された独占業務があります。例えば、「重要事項の説明」が独占業務にあたり、不動産の売買や賃貸契約を結ぶ前に、物件の詳細や契約内容について顧客に説明する業務のことです。ほかにも、重要事項を記載した書面に宅建士が記名押印する「35条書面(重要事項書面)への記名」や、契約が成立した後に交付する契約書面に宅建士が記名押印する「37条書面への記名」といった業務も宅建士の独占業務です。
宅建の資格試験概要を確認しよう
宅建の資格試験は日本国内に居住していれば、年齢や学歴に関係なく、誰でも受験が可能です。資格試験の概要を解説しますので、よく確認しておきましょう。
試験日程・スケジュール
宅建の試験は毎年1回、10月の第3日曜日に実施されると決まっています。令和6年(2024年)の宅建試験は、10月20日(日)13:00~15:00に実施される予定です。
登録講習修了者も通常の受験者と同じ日に試験が実施されますが、試験時間が異なります。登録講習修了者は5問免除となるため、試験時間が通常の120分より10分短い110分となり、13:10に開始されます。
試験当日は、受験の注意事項説明が始まる12:30(登録講習修了者は12:40)までに自席に着席してください。なお、試験時間中に途中退出した場合、棄権または不正受験とみなされ、試験は採点されないので注意してください。
合格発表日
合格発表は毎年原則として、11月下旬に発表になります。
令和6年(2024年)の宅建試験の合格発表は、11月26日(火)に実施される予定です。
合格者の受験番号が一般財団法人 不動産適正取引推進機構のホームページに掲載されたら、後ほど合格証書が郵送にて届きます。
試験会場
宅建の試験は都道府県ごとに実施されるため、受験申込みは申込み時点で住んでいる都道府県で行います。通常は住民票のある場所で受験しますが、学生や単身赴任などで住民票とは別の場所に住んでいる場合は、現在住んでいる都道府県で受験することができます。
ただし、他の都道府県からの受験を受け入れている場合、その都道府県に住んでいなくても受験申込みが可能な場合もあります。
受験費用
8,200円
※消費税及び地方消費税は非課税
※一度振り込んだ受験料は、原則返還されません
インターネット申込の場合は、クレジットカード、コンビニエンスストア、ペイジーから選択できます。
郵送申込の場合は、各都道府県ごとにペイジー、コンビニエンスストア、郵便振替のうち、いずれかひとつの方法が指定されます。
申し込み方法
受験の申込み方法は以下の2通りあります。
- インターネットで申し込む方法
「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」のホームページにインターネット申込みページがあります。
令和6年7月1日(月)9:30~7月31日(水)23:59まで
なお、7月31日は申込みが集中することが予想されるため、7月30日までに申込むことが推奨されています。
- 郵送で申し込む方法
都道府県庁や市役所、書店などで願書を入手して郵送します。
試験案内配付期間:令和6年7月1日(月)~7月16日(火)
申込み受付期間:令和6年7月1日(月)~7月16日(火)
※郵送は簡易書留郵便として郵便局の窓口で受付されたもので、消印が上記期間中のもののみ有効
試験内容
宅建の試験は全て4択のマークシート方式で、記述問題はありません。出題数は50問で、採点は1問1点の50点満点で行われますが、合格点は固定されておらず、受験人数や合格率によって変動します。試験時間は2時間です。
試験科目
宅建試験の科目は以下の4つに分かれています。
- 「宅建業法」出題数20問:宅地建物取引業法の内容
- 「権利関係」出題数14問 :主に民法などの内容
- 「法令上の制限」出題数8問:都市計画法や建築基準法などの内容
- 「税・その他」出題数8問 :不動産に関する税金や統計などの内容
宅建業法は最も出題数が多く、全体の4割を占めているため、合否を決める重要な科目です。
宅建の合格率・難易度は?
宅建の最新の合格率は、令和5年度(2023年度)で17.2%でした。過去10年間の合格率は15~17%と決して高くはありませんが、他の国家資格と比較すると、宅建は比較的合格しやすい部類に入ります。不動産や法律の知識がなくても、適切な準備と努力をすれば十分に合格可能な試験です。
直近10年の合格率推移
宅建の過去10年分の合格率と合格者の推移を見ていきましょう。
実施年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
---|---|---|---|
令和5年度 |
233,276名 |
40,025名 |
17.2% |
令和4年度 |
226,048名 |
38,525名 |
17.0% |
令和3年度(12月試験) |
24,965名 |
3,892名 |
15.6% |
令和3年度(10月試験) |
209,749名 |
37,579名 |
17.9% |
令和2年度(12月試験) |
35,261名 |
4,610名 |
13.1% |
令和2年度(10月試験) |
168,989名 |
29,728名 |
17.6% |
令和元年度 |
220,797名 |
37,481名 |
17.0% |
平成30年度 |
213,993名 |
33,360名 |
15.6% |
平成29年度 |
209,354名 |
32,644名 |
15.6% |
平成28年度 |
198,463名 |
30,589名 |
15.4% |
平成27年度 |
194,926名 |
30,028名 |
15.4% |
平成26年度 |
192,029名 |
33,670名 |
17.5% |
過去10年間の宅建の合格率で、最も低かったのは令和2年度の12月試験で13.1%、最も高かったのは令和3年度の10月試験で17.9%でした。
なお、宅建の試験は原則として年に1回実施されますが、令和2年度と令和3年度はコロナ禍の影響で、10月と12月の2回に分けて実施されました。
他の資格と比較すると?
宅建の難易度は、ほかの類似の資格試験と比べてどうでしょうか。類似の資格試験の合格率と比較をしたのが下記の表です。
|
合格率 |
合格者数 |
---|---|---|
宅建 |
13.1~17.9% |
約20万人 |
司法書士 |
4~5% |
約1万人 |
行政書士 |
8~15% |
約4~5万人 |
マンション管理士 |
8% |
約1.5万人 |
ファイナンシャルプランナー2級 |
約40% |
約4万人 |
司法試験に次いで難しいとされる司法書士の合格率は4~5%となっています。官公署に提出する書類の作成などを行う行政書士の合格率は8~15%で、宅建よりやや難関と言えます。試験では多くの分野が宅建と共通して出題されるマンション管理士の合格率は8%で、難関資格です。問題の難易度の違いにより合格率に差が出ていると思われるため、マンション管理士の取得を考えているなら、先に宅建を取得するのがよいでしょう。
国家資格のファイナンシャル・プランニング技能士(FP)は、不動産を金融やローンの面からアプローチできる資格です。2級の合格率は約40%と高めであり、宅建の試験範囲と重複する分野もあるので、宅建の受験者にも人気の資格です。
宅建の合格率が高くない理由は3つ
宅建の試験に合格できるのは5人に1人以下と、合格率が高くないのはなぜでしょうか。ここでは、その理由を3つにまとめて解説していきます。
①幅広い人が受験できるため
宅建の試験は年齢や学歴に関係なく誰でも受験でき、受験手数料も8,200円と手頃です。受験資格に制限がないため、準備不足で受験する人が多く、合格率が低い要因となっています。司法試験のように受験資格が厳しい試験と異なり、軽い気持ちで受験する人も少なからず存在するため、合格率が低くなっています。
②勤務先の意向で受験している人もいるため
不動産取引を行う宅建業者には一定数の宅建士を設置する義務があり、社員に宅建士の取得を奨励する企業も多いです。そのため、とくに新入社員などは勤務先の意向で受験することが多く、十分な勉強時間が取れないまま試験に臨んだり、受験者本人が合格への意欲が低いケースもあります。
③出題内容が難化しつつあるため
不動産取引の信頼性と安全性を高めるために、平成27年に「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」に資格の名称が変更されました。宅建士が士業となったことで、試験もより専門的な知識を求めるものに変わってきています。
また、以前に比べて建物取引時に必要な調査が増え、水害ハザードマップの記載条項が重要事項説明に追加されるなど、宅建士として知っておくべき知識は年々増加しています。これらの理由で試験問題が難しくなってきていることも、合格率が高くない理由と考えられます。
合格したら?資格証明書発行について
宅建の試験に合格した後、実際に宅建士として業務を行うためには、さらに登録手続きと宅建士証の取得が必要です。合格したら、受験した試験地の都道府県で登録を受けることになります。そして、登録を受けた都道府県知事から宅地建物取引士証(宅建士証)の交付を受けて初めて、重要事項説明や契約書への記名など、宅建士としての業務が可能になります。
また、宅建士証は5年ごとに更新手続きを行う必要があり、更新のためには法定講習を受講する必要があります。宅建の試験に合格後1年以内に宅建士証を交付する場合は講習は不要ですが、合格後1年を超える場合は宅建士証の5年ごとの更新時に受講するものと同一の講習を受講する必要があります。
宅建の資格を持つ3つのメリット
宅建の資格を取得したら、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを3つ紹介します。
①就職・転職が有利になる
不動産業界では、各事務所に一定数の宅建士が必要なため、資格があれば就職の際に優遇されます。さらに、宅建資格は、不動産業界だけでなく、建築、金融、小売業など幅広い業界で役立つので、他業種へ転職する際にも有利です。
②独立開業や年収・キャリアアップが狙えるようになる
不動産業界での信頼と専門性が高まるので、年収アップやキャリアアップも可能になります。さらに、宅地建物取引業の免許も取得すれば独立開業も可能になります。
③資格手当を受けられる場合がある
多くの不動産会社では、宅建資格取得者に対して資格手当を支給しています。手当の金額は会社によって異なりますが、月額5,000円~20,000円程度が一般的です。勤務先の方針によっては、建設業界や金融業界でも資格手当が出る場合があります。
宅建の資格が役立つ業界4選
宅建の資格が実務に役に立つのは、不動産業界だけではありません。具体的にはどの業界で役に立つのでしょうか。
①不動産業界
不動産の売買や賃貸借の仲介をおこなう会社では、従業員5名につき1名以上の宅建士を設置することが義務付けられています。そのため、不動産業界でキャリアアップを目指すなら、宅建資格は必須とも言えます。
②建設業界
建築業界では、開発や土地の売買、自社で建築した物件を販売する際に宅建の資格が必要となります。特に、開発事業や土地の仕入れに関わる部門では、宅建資格保有者が重宝される傾向があります。
③金融業界
金融業界では、不動産融資を担当する部署で不動産の担保評価や融資審査をする業務が多いため、宅建資格が評価されます。また、顧客から受ける住宅ローンや不動産投資に関する相談に対して、専門的なアドバイスができるようになります。
④不動産管理会社
マンションやビル管理を行う不動産管理会社でも、宅建資格があれば、建物の賃貸借や管理に関する法律問題に対応できます。管理業務を行う際に必要な国家資格である「管理業務主任者」の試験問題は宅建試験の内容と似ているため、両方の資格を取得すれば管理会社でのキャリアアップも目指せるでしょう。
合格のためには?
宅建試験に合格するためには、試験までに十分な時間を確保して勉強に取り組む必要があります。早めに学習を開始して計画的に勉強を進めながら、無理なく合格を目指しましょう。
勉強時間の目安
宅建の合格に必要な勉強時間は、一般的に200~400時間と言われています。すでに不動産取引や法律の知識がある場合、100時間程度の勉強で合格する人もいます。一方、法律の知識や不動産取引の経験がない人や、試験勉強に慣れていない人は500時間以上かけて試験に挑むこともあります。資格試験の勉強では、単に時間をかけるだけでなく、効率的な学習方法を選ぶことが重要です。過去問や模擬試験を活用し、実践的な学習の時間も確保しましょう。
最低でも3カ月前から勉強しよう!
宅建合格までに300時間の勉強時間を確保するには、どれくらいの勉強期間が必要でしょうか。例えば、社会人が仕事と勉強を両立しつつ、平日1〜2時間、休日3〜4時間を勉強に充てると、約145日(およそ4ヵ月と3週間)で300時間の学習時間を達成できます。学生が夏休みなどの長期休みを利用して1日6時間勉強できると、約50日(およそ1ヶ月と20日)で300時間の学習時間を達成できます。
1日3時間の勉強を続ける場合、約3〜5ヶ月かかるため、宅建の勉強は最低でも3か月前には始めるようにしましょう。法律や不動産の知識がない方や、仕事や家事でまとまった勉強時間が確保できない場合は、さらに早めに勉強を開始することをおすすめします。
独学でも大丈夫?勉強法3選
宅建の勉強法には主に次の3つがあります。それぞれのメリットとデメリットを比較して、自分に合った方法で勉強しましょう。
- 独学
費用が抑えられて自分のペースで勉強できるメリットがありますが、一人で勉強を進めていくうえでモチベーションの維持が難しく、疑問点を質問できる相手がいない、効率的な学習方法が分かりにくいといったデメリットがあります。
- スクール通学
スクール通学は、直接指導を受けられることや学習環境が整っていてモチベーションを維持しやすいことが大きなメリットですが、決められた時間に通学する時間的負担、金銭的な負担が大きいのがデメリットです。
- 通信講座
自分の好きなペースで勉強でき、教材選びや学習計画の手間が省けるため、効率的に学習できます。また、多くの通信講座ではサポート体制が整っており、疑問点も解決しやすいです。デメリットとしては、通学に比べて講師や他の受講生との直接的なコミュニケーションが取れないことや、独学よりも費用がかかる点が挙げられます。
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まとめ
宅建は不動産取引の専門家としての資格で、合格後には宅建士として活動できます。これは不動産業界だけでなく、金融や建築業界でも役立つ資格です。合格率は15〜17%と決して簡単ではありませんが、必要な学習時間と1日に確保できる勉強時間を見積もり、計画的に準備することが重要です。独学も可能ですが、通信講座やスクール通学のメリットも考慮し、自分に最適な学習方法で合格を目指しましょう。