情報セキュリティマネジメントとは?試験概要や難易度、勉強のコツも紹介
急速に情報のデジタル化が進む中、それらを狙ったサイバー攻撃は年々増加し、悪質化しています。この状況において、情報管理の徹底や、情報にかかわる人々の意識向上など、組織内での情報セキュリティマネジメントは不可欠です。
そんな中注目されているのが、「情報セキュリティマネジメント試験」という国家試験です。この試験は、組織での情報セキュリティマネジメントを担う人材の育成を目的として実施されています。
本記事では、様々な脅威から組織内の情報を守るためのスキルを認定する「情報セキュリティマネジメント試験」の難易度や出題範囲、合格するための勉強方法などを解説します。合わせて、資格取得のメリットや、活用できる職業についてもご紹介しますので、キャリアアップにお役立てください。
情報セキュリティマネジメントとは?
情報セキュリティマネジメントとは、情報の安全性を確保するために、個人ではなく組織全体で実施する管理プロセスです。
情報セキュリティマネジメントでは、以下の3つの要素を均衡を保ちながら確保する必要があります。
|
概要 |
対策例 |
---|---|---|
機密性 |
情報に対するアクセス権限の管理 |
・情報ごとにアクセス権限を定める |
完全性 |
改ざんされていない、正確で過不足無い情報が、最新の状態で保持されている |
・定期的なバックアップ取得 |
可用性 |
利用可能な人がいつでも閲覧、使用可能な状態 |
・クラウドシステムの活用 |
例えば、「機密性を重視しすぎるあまり、可用性の低下を招く」などということがないよう、組織全体で統一した基準のもと、バランスよくセキュリティ対策を講じ、情報漏洩や不正アクセス、改ざんなどのリスクから大切な情報を守る仕組みを構築することが重要です。
さらに、技術面だけではなく、情報にかかわる人々の意識を向上させることも、情報セキュリティマネジメントの重要な要素です。具体的には、セキュリティポリシーや運用マニュアルの作成、関係者への研修会の実施、定期的な運用体制の見直しなどがこれに該当します。
情報セキュリティマネジメントが企業に必要な理由とは
インターネットの普及と高速化により、様々な分野でのデジタル化が進み、現代社会には膨大なデジタル情報が蓄積されています。企業間や個人間では、ネットワークを通じて情報のやり取りが容易になっている一方で、これらを狙うサイバー攻撃は巧妙化しており、被害件数も年々増加しています。
以下はIPAが発表した、2023年に発生したセキュリティ被害の状況です。
順位 |
「組織」向け脅威 |
初選出年 |
10大脅威での取り扱い |
---|---|---|---|
1 |
ランサムウェアによる被害 |
2016年 |
9年連続9回目 |
2 |
サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃 |
2019年 |
6年連続6回目 |
3 |
内部不正による情報漏えい等の被害 |
2016年 |
9年連続9回目 |
4 |
標的型攻撃による機密情報の窃取 |
2016年 |
9年連続9回目 |
5 |
修正プログラムの公開前を狙う攻撃(ゼロデイ攻撃) |
2022年 |
3年連続3回目 |
6 |
不注意による情報漏えい等の被害 |
2016年 |
6年連続7回目 |
7 |
脆弱性対策情報の公開に伴う悪用増加 |
2016年 |
4年連続7回目 |
8 |
ビジネスメール詐欺による金銭被害 |
2018年 |
7年連続7回目 |
9 |
テレワーク等のニューノーマルな働き方を狙った攻撃 |
2021年 |
4年連続4回目 |
0 |
犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス) |
2017年 |
2年連続4回目 |
※2023年に発生した社会的に影響が大きかったと考えられる情報セキュリティにおける事案から、IPAが脅威候補を選出し、情報セキュリティ分野の研究者、企業の実務担当者など約200名のメンバーからなる「10大脅威選考会」が脅威候補に対して審議・投票を行い、決定したもの。 |
※引用:情報セキュリティ10大脅威 2024|IPA(独立行政法人情報処理推進機構)
事故や攻撃によって組織が保有する情報が漏洩した場合、組織は実害のみならず、信用やブランドイメージの大きな失墜という深刻なダメージを受けます。現代のデジタル社会において、情報セキュリティマネジメントは欠かすことのできない経営課題のひとつと言えるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験とは?資格取得のメリットは?
情報セキュリティマネジメントは、計画(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、改善(Act)の4段階のプロセスを循環させ、セキュリティの質を高めていく必要があります。これをPDCAサイクルといいます。情報セキュリティマネジメント試験は、PDCAサイクルを回しながら、様々な脅威から組織を守るための技術と管理スキルを認定する国家試験です。この資格を取得することで、情報セキュリティに関する基本的な知識を持っていることが証明されます。
では、資格取得で得られる具体的なメリットは、どのようなものがあるでしょうか。
【メリット①】キャリアアップ・収入アップに繋げることができる
情報セキュリティマネジメント試験の合格率は50〜70%台と言われており、決して難易度の高い試験ではありません。しかし、国家試験であり認知度の高い資格でもあります。情報セキュリティマネジメントの資格が必須である求人は多くありませんが、資格を持っていることで、組織が必要としている情報マネジメントの知識を持つ人材として、就職活動においてプラスに働く可能性があります。また、情報セキュリティマネジメント人材は、業種、職種を問わず需要が高まっています。現在所属する部署での情報セキュリティ対策に貢献することができれば、人事評価の向上や収入アップも期待できるかもしれません。
【メリット②】情報セキュリティマネジメントを体系的に学べる
情報セキュリティマネジメント試験を受けるもうひとつのメリットは、情報セキュリティに関する知識やスキルを体系的に習得できる点です。
試験では、情報セキュリティ関連法規、さまざまな脅威への対策方法、サイバー攻撃の手法、ネットワークの基礎知識などに加え、身近な事例を使った実践力を問う問題も出題されます。
これらの学習を通じて身についたスキルは、現在の職務で役立つだけでなく、セキュリティエンジニアへのキャリアチェンジなど、将来のキャリアパスを拓く上で大きな力となるでしょう。
情報セキュリティマネジメントの資格を活かすことができる職業とは
【職業例①】企業の情報管理・セキュリティ部門
企業の情報管理部門は、社内のIT機器やネットワーク、業務システムを構築し、管理・運用を行う部署です。これらの保守管理には、情報セキュリティのスキルが欠かせません。また、サイバー攻撃や内部不正に対するセキュリティ対策を実施し、社員への情報セキュリティ教育も担当します。
【職業例②】システムエンジニア(SE)
サイバー攻撃による被害は年々増加しています。それに伴い、ソフトウェアの設計や開発を行うシステムエンジニアには、セキュリティに強いシステムやネットワークの構築、運用のスキルが重要になっています。
【職業例③】プログラマー
ハッカーは、プログラムのバグなどの脆弱性を狙って攻撃を仕掛けます。情報セキュリティマネジメントの知識は、セキュアプログラミング(脆弱性を防ぐプログラミング)を行う際に役立ちます。また、自身が開発したシステムがサイバー攻撃を受けた場合にも、これらの知識を活かして適切な対応をとることができるでしょう。
【職業例④】 ITコンサルタント
ITコンサルタントの仕事は、ITを活用した経営戦略の提案や、システム導入時の全体設計や開発の検討などがあります。顧客へ提案する際、サイバー攻撃や情報セキュリティ関連法規などの知識があることで、セキュリティ面にも配慮した提案を行うことができます。
また、セキュリティ対策に重点を置いたITコンサルティングを行う、セキュリティコンサルタントの需要も年々高まっています。
情報セキュリティマネジメント試験の難易度や合格率は?
試験を主催するIPAは、情報セキュリティマネジメント試験のスキルレベルを7段階の内のレベル2と位置付けており、難易度は決して高くありません。過去の合格率はおおよそ50〜60%台で推移しており、さらに試験制度が変更された令和5年度の合格率は平均で72.6%と非常に高い水準を示しています。
経験年数別の令和5年度の合格率は、未経験者が59.1%、6年以上8年未満の受験者が最も高い85.7%の合格率を記録しています。
年齢別では10歳以下から69歳まで、幅広い年齢層の人が合格しています。
情報セキュリティマネジメント試験の出題内容と範囲
科目A試験の試験内容と出題範囲
情報セキュリティマネジメント試験は、科目A試験と科目B試験があり、試験全体で120分、60問の試験となります。
科目A試験は選択問題で、情報セキュリティの考え方、マルウェア、情報漏洩、不正アクセスなどの各対策、情報セキュリティ関連法規などの重点分野と、ネットワーク、プロジェクトマネジメント、システム戦略などの関連分野から出題されます。
科目B試験の試験内容と出題範囲
科目B試験では、「内部不正の防止」、「情報セキュリティ関連法規の制定・改正への対応」など、具体的なケーススタディを通じて、情報セキュリティ管理の実践力を問う問題が出題されます。科目A問題と比較して長文の問題が多く、回答に時間がかかる傾向があります。
情報セキュリティマネジメント試験の受験概要とは
【受験概要①】試験時期
かつて年2回実施されていた情報セキュリティマネジメント試験ですが、令和5年4月より年間を通して随時(年末年始を除く)受験が可能になりました。希望する会場と、当月から3カ月先の月末までの間で希望の日時を選択して申し込みます。予約は、申し込みから3日後以降の日付から可能です。
試験の実施時間は会場によって異なりますが、午前9時から午後9時の間で設定されています。
【受験概要②】試験形式
科目A試験と科目B試験は同じ試験時間内に実施され、どちらも多肢選択式です。試験時間は合計120分、出題数は全体で60問で、1000点満点中600点以上が合格となります。試験終了後、画面上にて総合評価点を確認することができます。
【受験概要③】受験方法
情報セキュリティマネジメント試験は、試験会場に設置されたコンピュータを使用して、CBT(Computer Based Testing)方式で実施されます。身体の不自由等によりCBT方式での受験が難しい方は、4月と10月の年2回、ペーパー方式での受験が可能です。ただし、申込みにはCBT方式での受験が困難であることへの証明書類の申請が必要となります。
【受験概要④】受験資格
情報セキュリティマネジメント試験の受験資格には、年齢や国籍などの制限は一切ありません。誰でも受験可能で、情報セキュリティに関する知識を評価される試験です。初心者から専門家まで幅広い層が挑戦することができます。
情報セキュリティマネジメント試験に合格するための勉強方法は?
【ポイント①】出題頻度の高い問題をチェックして重点的に勉強する
IPAのウェブサイトには、情報セキュリティマネジメント試験の出題内容が記載されています。
科目A試験の対策として、重点分野とされているセキュリティ関連や法律関連の基礎知識をしっかりと習得することが重要です。これらの知識は、科目B試験の実践力を問う問題でも必要となりますので、まずは科目A試験対策を徹底して終えてから科目B試験対策に取り組むことをおすすめします。
【ポイント②】公開問題や過去問などを繰り返し解き進める
2023年4月から、試験時間や問題数、出題範囲などが改訂されたため、過去問題の蓄積は多くありませんが、IPAが公開している過去問題や改訂前の問題も活用して、問題を繰り返し解き、理解不足点を洗い出すことで効率的な学習を進めることができます。
【ポイント③】試験対策講座を受講する
独学が難しいと感じたり、より効率的に試験合格を目指したい方は、指導校の試験対策講座を受講することをおすすめします。経験豊富な講師陣による、重要ポイントに絞った効率的な指導で、日々の仕事で忙しい方でも、安心して情報セキュリティマネジメント試験合格を目指すことができます。
「情報セキュリティマネジメント試験対策講座」ならヒューマンアカデミー
国家資格である情報セキュリティマネジメント試験に合格し、キャリアアップを目指したい方や、情報セキュリティを基礎からしっかりと学びたい方には、ヒューマンアカデミーの情報セキュリティマネジメント試験対策講座がおすすめです。経験豊富な講師陣が、試験の全内容を網羅したテキストや、企業における実際のセキュリティインシデントのケーススタディを交えた動画解説により丁寧に指導します。さらに、公開問題やサンプル問題を元に作成した、オリジナル模擬試験による学習定着度の確認もできます。
実際の試験で使用される画面や操作方法も、講義動画で確認することができますので、初めて受験する方も安心です。
リンク:https://haec.athuman.com/shop/g/g1243T001/
まとめ
情報化が進む現代において、情報セキュリティマネジメントは、IT業界に限らず、あらゆる組織において重要度が高まっています。情報セキュリティマネジメント試験は、知名度の高い国家試験でありながら、決して難易度は高くないため、IT技術者だけではなく他業種や学生にも挑戦しやすい試験です。
効率よく情報セキュリティマネジメントスキルを習得し、キャリアアップを目指しましょう。