ブリーダーになるには資格が必要?年収や仕事内容、やりがいは
犬に関わる仕事として人気の「ブリーダー」ですが、必要な資格や具体的な仕事内容についてはよく分からない、という人も少なくありません。
この記事では、ブリーダーを目指す上で役立つ資格や、仕事内容・年収の相場などを紹介します。また、やりがいや、どんな人がブリーダーに向いているかについても解説しますので、ブリーダー業に関心がある人はぜひ最後までお読みください。

ブリーダーって何?

ブリーダーとは、動物の繁殖や飼育、販売などを仕事にする人です。
ペットなど愛玩動物のブリーダーは、血統書(両親やその祖先の血筋が純粋種であることを証明する書類)付きの犬や猫を扱います。一般的には犬を扱っているブリーダーのほうが多いようです。
主な仕事内容は、食事や排泄物の対応といった日常的な世話や、健康管理、繁殖活動、飼い主への飼育指導などです。そのほか、飼育した犬をドッグショーやコンテストといったイベントへ出場させたり、しつけや訓練をおこなったりするブリーダーもいます。
そんなブリーダーには、主に2つの種類があります。以下に解説していきますので、順にみていきましょう。
シリアスブリーダー
シリアスブリーダーとは、その名の通り、ブリーディングに真摯に向き合うプロフェッショナルなブリーダーのことをいいます。繁殖や飼育に関する正しい知識があり、健康や飼育環境の管理に対しても高い意識を持っています。繁殖は計画的におこなうため、シリアスブリーダーが手がける出産頭数は多くありません。
パピーミル
パピーミルとは、質よりも利益を優先するブリーダーのことです。売上のために流行の種などを無計画に繁殖させるため、結果的に手をかけた飼育ができず健康を損なう子犬が増え、動物福祉の観点からも問題になっています。ブリーダーになりたいのであれば、シリアスブリーダーを目指すべきといえます。
ブリーダーになるための資格4選
ブリーダーは、資格を持っていなくてもなれる職業ですが、より質の高いブリーディングをおこなうために「愛玩動物飼養管理士」や「愛玩動物看護師」といった資格が役立ちます。
また、自分で開業をする場合には「第一種動物取扱業」へ登録しなければならず、この第一種動物取扱業の登録申請には「動物取扱責任者」の資格が必要です。
次項で、これらの資格について一つずつ紹介していきます。
愛玩動物飼養管理士とは
愛玩動物飼養管理士は、公益社団法人 日本愛玩動物協会が認定する民間資格で、「動物取扱責任者」の資格要件の一つとなっています。
この資格では、動物関係法令や、適切な飼育をするために必要な知識・技能などを体系的に学び習得することが可能です。ブリーダーになるための土台となる知識を得られるため、就職や開業にも役立つといえます。
資格を取得するためには、日本愛玩動物協会の通信教育を受講し、所定の試験に合格する必要があります。
愛玩動物看護師とは
愛玩動物看護師は、2019年6月に制定された「愛玩動物看護師法」により生まれた国家資格です。動物の看護に関わる専門的な知識や技能を取得でき、この資格を持つと獣医師の指示のもと医療行為をおこなうことも可能です。また、愛玩動物看護師は「動物取扱責任者」の資格要件の一つでもあります。
受験資格があるのは、以下のいずれかを満たした人です。
- 大学で指定の科目を修めて、卒業した人
- 愛玩動物看護師養成所(専門学校など)で、3年以上必要な知識・技術を習得した人
なお、上記は通常ルートの場合です。既卒者や在学者・現任者の場合、受験資格を得る方法は異なるため、行政のホームページなどで確認しましょう。
第一種動物取扱業とは
第一種動物取扱業とは、有償・無償に関わらず、営利目的で継続した動物の取り扱いをおこなう業者のことをいいます。動物の販売や保管、貸出し、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的でおこなうのであれば、登録が必要です。
第一種動物取扱業者は、動物の適切な取り扱いのため、飼養施設の構造や規模、動物の管理方法などの基準を守ることが義務付けられています。
ペットシッターや出張訓練所などのように、動物を所有せず飼養施設がない場合も対象です。申請手続き方法は各都道府県によって異なるため、各自治体の窓口やホームページで確認しましょう。
動物取扱責任者とは
動物取扱責任者は、第一種動物取扱業者の登録にあたって、各事業者に1名以上配置しなければならない人員です。愛玩動物飼養管理士や愛玩動物看護師のように、試験を受けて資格を得るのではなく、第一種動物取扱業者から選任されることによってその資格保有者となります。
動物取扱責任者に選任されるには、以下のいずれかの条件に該当している必要があります。
- 獣医師の免許がある
- 愛玩動物看護師の免許がある
- 半年間以上の実務経験または実務経験と同等の1年間以上の飼養経験 + 関連知識・技能を1年間以上教育する学校法人やその他の教育機関を卒業している
- 半年間以上の実務経験または実務経験と同等の1年間以上の飼養経験 +関連知識・技能の習得を証明する資格を取得している
ブリーダーの年収とキャリア
ブリーダーはどのくらいの収入を得られるのか、どのようなキャリアを形成できるのかも気になるところです。働き方のパターンも併せて、詳しくみていきましょう。
年収の目安
ブリーダーの年収は、企業やペットショップに就職した場合と、自分で開業した場合とで変わります。それぞれの年収の目安を知っておきましょう。
●企業に就職した場合
企業で働くブリーダーの年収は、新人の場合で200万円程度が相場となっています。ある程度の経験年数や技術があれば、400万円以上の年収を目指すことも可能です。
企業に入るメリットは、未経験でもブリーダーとして働けることです。また、収入を得ながらブリーディングのノウハウを学ぶことができるため、将来的に独立したいと考える人が経験を積むためにまず企業に就職する、といったケースも多いようです。
●独立・開業した場合
開業した場合の年収は、ブリーダーの実力によって左右されますが、ある程度の実力があれば年商500万円〜800万円くらいを目指すことが可能です。ただし、売上から飼育費や人件費などを差し引くことになるため、実際に手元に入るのは売上の半分程度になります。
働き方
企業やペットショップの場合、正社員だけでなく、契約社員やパートタイマー、アルバイトといったさまざまな雇用形態があるため、状況に応じた働き方を選ぶことも可能です。
また、個人経営のブリーダーのもとでアシスタントとして働くケースもあり、独立へ向かうルートも、自分に合った方法を選択しやすくなっています。
キャリア形成について
ブリーダーのキャリア形成は、企業などに就職して技術を培った後、独立・開業するのが一般的です。開業して事業を軌道にのせるためには、ブリーダーとしての知名度を上げて、一頭あたりの単価を高くする、親犬の頭数や犬種を増やして規模を拡大するといった方法があります。また、しつけ教室やペットホテルといったサービスを増やして、事業拡大を目指すのも一つです。
ブリーダーの仕事

ブリーダーは、具体的にどのような仕事をするのでしょうか。ここでは、犬のブリーダーを例にして、主な仕事内容を4つに分けて詳しく紹介します。ブリーダー業務のイメージをつかむためにも、ぜひ参考にしてみてください。
交配・繁殖
ブリーダーの主な業務の一つは、犬の交配・繁殖を成功させることです。親犬と生まれてくる子犬の健康を確保できるよう、知識と経験を生かしながら、計画的に繁殖をおこないます。
繁殖を成功させるためには、食事や運動のサポートといった日々の世話をはじめ、衛生的な環境の維持や、栄養管理なども大切です。また、犬の様子や体調の変化を日々細かくチェックし、安全に出産できるよう健康管理を徹底する必要があります。
犬の流通
ブリーダーは、繁殖させた犬をペットショップや卸売業者へ販売することで利益を得ます。安定した収入を得るためには、健康な犬を繁殖・流通させることはもちろん、顧客との信頼関係を築くことも重要です。
なお、ペットショップの中には、残念ながら、劣悪な環境で飼育・陳列をおこなっている店も存在します。このような場所に犬を提供するのは避け、適切な販売先を選ぶことも大切です。
直接販売
直接販売の場合、子犬を適切な時期になるまで親犬から離さず、社会性を身につけてから販売することが多いです。
また、ブリーダーの人柄や飼育環境を確認できるという安心感から、犬を買うなら直接購入が良いと考える飼い主も少なくありません。
WEB上では、ブリーダーに育てられた犬と飼い主のマッチングサイトなどもあるので、こういったサービスを活用するのも良いでしょう。
飼い主からの相談対応
ブリーダーの仕事は、犬を提供すれば終わりというわけではありません。
飼い主は犬を購入する前だけでなく、引き取った後にもさまざまな疑問や悩みを抱えている場合があるため、その相談に対応することも多いです。
飼い主が持つ悩みには、主に以下のようなものがあります。
- 食事に関する悩み
- 飼育環境に関する悩み
- 排泄、吠え癖などしつけに関する悩み
飼育指導をおこなう際は、犬の個々の特性を考慮した対応方法をわかりやすく伝えることが大切です。また、飼い主の相談に真摯に向き合うことは、信頼関係の構築や新たな縁にも繋がります。
ブリーダーのやりがいとは?
ブリーダーには、
「命が誕生したときの喜びや、達成感を味わえる」
「新しい飼い主の喜んでいる姿が見られる」
といったやりがいがあります。
自分が世話をした動物が新しい命を産んだときには、何ものにも代え難い大きな喜びを味わえます。また、繁殖はいつも上手くいくとは限らないため、成功したときの達成感はひとしおでしょう。
繁殖させた子犬や子猫は、将来的に新しい飼い主のもとへ引き取られることになります。愛情をかけて世話をした動物と離れるのは寂しいですが、動物を迎えて喜ぶ飼い主の姿を見たときは、やりがいを感じる瞬間でもあります。直接販売であれば、飼い主との付き合いが長く続くこともあるため、その後その動物が成長した姿を見られる機会も少なくないはずです。
ブリーダーに向いている人の4つの特徴

以下の4つの特徴に当てはまる人は、ブリーダーに向いているといえます。
- 動物の成長を見るのが好き
- 根気強い
- 世話好き
- 子犬が好き
それぞれの理由を詳しくみていきましょう。
動物の成長を見るのが好き
ブリーダーは、子犬の誕生や成長過程を間近で見ることができるため、動物を一から育てるのが好きな人にはおすすめの職業です。
子犬を提供した飼い主とは関係が長く続くこともあるので、その後の成長を見守り続けられるという喜びもあります。
根気強い
探究心があり努力を惜しまない人であれば、ブリーダーとして成功する可能性が高いでしょう。
動物の繁殖を成功させることは難しく、いつも上手くいくとは限りません。
また、日々の世話やしつけも決して簡単にいくものではなく、思い通りに進まない場合もあるため、根気強く犬に向き合う力が必要になります。
世話好き
ブリーダーは日々、犬の食事や排泄の対応、運動のサポート、ゲージの清掃などをおこなうことになるため、世話をするのが好きであることも大切です。
また、体調の変化にすぐに気づくことも重要であるため、普段から注意深く様子を観察することも重要です。
子犬が好き
子犬が好きであることも、ブリーダーになるには欠かせない要素です。ブリーダーは、生まれた子犬たちに愛情を注ぎ、優良な犬に育てていかなければなりません。子犬が大好きで、子犬に囲まれて過ごすことが苦でない人でなければ、やりがいを持ってブリーダーを続けることは難しいでしょう。
ブリーダーになるまでの流れ
ブリーダーになるには、主に以下の2つのルートがあります。
- 未経験からブリーダーになる場合
- 専門学校を卒業してブリーダーになる場合
ブリーダー企業は、未経験者の採用をおこなっている場合も多いです。企業に入ることができれば、未経験でも収入を得ながら実務経験を積むことができるメリットがあります。ただし、初めのうちは給料が低かったり、経験者と比べて採用されづらかったりすることもあるようです。
一方、専門学校を卒業してからブリーダーを目指す場合は、学校でブリーディングについて実践的に学ぶことができるため、スムーズに業務をスタートできるメリットがあります。
専門学校に通う時間がない人は、通信講座もおすすめです。場所や時間にとらわれず、ライフスタイルに合わせた学習ができるので、無理なく資格の取得を目指すことができます。ブリーダー業に関心がある人は、ぜひ、ヒューマンアカデミーの「ブリーダー講座」をチェックしてみてください。
まとめ
犬の誕生や成長を間近で見ることができるブリーダーは、とてもやりがいのある仕事です。
ブリーダーは資格がなくてもなることができる職業ですが、シリアスブリーダーを志すのであれば、豊富な知識と経験、高い意識を持つことが大切です。積極的にさまざまな分野を学び、関連資格の取得を目指しましょう。